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2015年11月22日

英語のレシピに見られる目的語省略:現象と文献の紹介

「炒まる」という表現を聞いたことがあるだろうか。これはある料理番組で聞いた動詞で、たしか「玉ねぎが炒まったら、肉を加えます」のような表現だったように思う。

「壊す」に対して「壊す」、「焼く」に対して「焼ける」のように、日本語には他動詞と自動詞の対応関係が見つかる場合がある。「炒める」と「炒まる」もそれに相当するが、「炒まる」については、自然な日本語だと思うかどうか、人によって違いがあるかもしれない。実際、自分が料理番組で耳にしたときは、ちょっとびっくりした。実際にウェブ上で検索してみると、かなりの使用例が見つかって、料理の際には使う人も多くいるようだ。

このように、レシピなど調理手順を説明するときの表現を観察すると、おもしろいことがいろいろ見つかる。自分の場合英語を研究しているので、イギリスで買ってきた料理本を見たりするのだが、レシピならではの言い回しが見つかってとてもおもしろい。

英語研究の中にもレシピに着目したものがいくつかあるが、特に注目されてきたのは、レシピにおける目的語省略だろう。英語では、たとえ前後の文脈からわかったとしても、John broke the vase.の代わりにJohn broke.のように目的語を省略しては表現できず、John broke it.のように代名詞を使う必要がある。英語でも目的語の省略がないわけではないが、日本語の場合とはかなり違って、どんなときに省略できるかなどが研究されている。英語の目的語省略についてざっと概観したい場合は、以下の文献が便利である(ちなみに、この本の305ページに料理動詞についてのコラムがあるので、それを見てみると料理関係の表現についてもっと興味が湧くかもしれない)。

■杉岡洋子・影山太郎. 2011. 目的語の省略. 影山太郎(編) 『日英対照 名詞の意味と構文』 東京: 大修館書店.

自由に目的語の省略ができない英語だが、興味深いことに、レシピとなると頻繁に目的語の省略が見られる。たとえば、次の例を見てみよう。

(1) Slice the onion finely, brown Ø in the butter and then place Ø in a small dish.

brown(炒める)の目的語とplace(置く)の目的語が省略されている(Øでそれを表現している)が、この場合はどちらも玉ねぎが目的語に当たると言える。

レシピの目的語がどんな性質をもっているのか、それを文法研究としてどのように扱うべきかなどをめぐっては、以下のような研究がある(関連文献が見つかったら追加していく予定)。

■新池邦子. 2010. 英語のレシピにおける顕現しない被動作主項. 『英語語法文法研究』 17, 162-167.
■Bender, Emily. 1999. Constituting context: Null objects in English recipes revisited. Proceedings of the 23rd Annual Penn Linguistics Colloquium, 53-68.
■Brown, Gillian and George Yule. 1983. Discourse Analysis. Cambridge: Cambridge University Press.
■Culy, Christopher. 1996. Null objects in English recipes. Language Variation and Change 8, 91-124.
■Ferguson, Charles A. 1994. Dialect, register, and genre. In Douglas Biber and Edward Finegan (eds.), Sociolinguistic perspectives on register, 15-29. Oxford: Oxford University Press.
■Haegeman, Liliane. 1987. Register variation in English: Some theoretical observations. Journal of English Linguistics 20, 230-248.
■貝森有祐. 2016. レジスターから見る語彙・構文の選択と英語教育への含意: レシピに注目して. Encounters 4, 65-82.
■Kittredge, Richard. 1982. Variation and homogeneity of sublanguages. In Richard Kittredge and John Lehrberger (eds.), Sublanguage: Studies of Language in Restricted Semantic Domains, 107-137. Berlin: de Gruyter.
■Massam, Diane and Yves Roberge. 1989. Recipe context null objects in English. Linguistic inquiry 20,134-139.
■Nonaka, Daisuke. 2016. How to cook with the locative alternation. Paper presented at the 6th UK Cognitive Linguistics Conference, July 19-22th, Bangor University.
■Ruppenhofer, Josef and Laura A. Michaelis. 2010. A constructional account of genre-based argument omissions. Constructions and Frames 2, 158-184.

基本的なことは1980年代の研究で指摘されているので(Brown and Yule 1983; Haegeman 1987; Kittredge 1982; Massam and Roberge 1989)、レシピの英語について興味のある人はそこからどうぞ。ちなみに、先ほどの例文(1)はBrown and Yule (1983: 175)から。

文法研究としては、Bender (1999)、Culy (1996)、Massam and Roberge (1989)、Ruppenfoher and Michaelis (2010)、談話分析としてはBrown and Yule (1983)、ジャンル・レジスターの研究としてはKittredge (1982)、レシピの英語の歴史的研究としてはCuly (1996)、などなど、それぞれの関心に応じて、そのあたりの論文を読んみるとヒントが見つかるかもしれない。

追記
文献を追加(2016/01/10)

関連記事:
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2015年10月31日

大学の英語の授業について考える

以前、高校の非常勤講師として働いていたとき、勉強合宿に引率として参加したことがある。そのとき、古文の授業を生徒といっしょに受けてみた。大学受験のときは、古文は文系科目の中ではあまりうまくできるようにならかったし、古文に触れるのも久しぶりだったが、そのときは思いのほか理解でき、また今だからこそわかる部分、楽しめる部分があるように思えた。

高校までの勉強で科目のイメージが決まってしまうのはしょうがないものの、そのとき苦手だったりおもしろくないと感じてずっとそのままになってしまうというのは、もったいないかもしれない。実際には、高校までとは違うアプローチも世の中にはたくさんあって、もっと違う付き合い方があるのだから。古文をおもしろいと思えたのは、曲がりなりにも文学部にいたおかげで、文学が専門ではなかったにせよ、文学や歴史や芸術との付き合い方にいろいろあるのを知って、付き合い方を選べるようになったのが大きい気がした(もちろん、言語学を学んだおかげで、古文の文法なども新たな気持ちで見れたというのもある)。それは自分が文学部にいたことの収穫の一つのように思う。

そう考えると、大学の英語教育は、高校までとは違う英語への接し方もあることを提示して、個々人が付き合いたいように英語に付き合える手伝いをするのも大切なことかもしれない。英語の授業にも、何かの手段として使えるようにするという実用的な面も、外国語を学ぶ意義や言語そのもののおもしろさを伝えるという面も、文化を伝える面も、いろいろあるはずだ。どの学部で教えるかによって強調する面は変わるだろうが、人によって興味を持つところは違って当然だし、いろんな接し方があること自体を示唆できたら意義深いものになるのではないかと思う。

英語は実技的な側面が強い科目なので、実技面での結果を伴わなければ意味がないと考えることもできるが、実技面を測ることを目的としすぎるとテストは最初からできる人が有利なようにも思える。また、そうそう短期的にスキルが上がるわけでもないので、もし仮にスキル向上が見られなければその学生にとって意味がないのかといえばそうとは言い切れないだろう。もちろん、実技面での効果がなくていいと言ってるのではないのだが、それ以外のことも視野に入れておもしろさや新しい付き合い方を見つけらるならそれも大事だし、それは結果的に実技面でのやる気の向上にもつながることもあるように感じる。

その点、大学の体育の授業などは、英語の授業にとっても参考になる部分あるかもしれない。自分が大学生だったころ、室内トレーニングの授業を履修したのだが(正確な科目名はちょっと違ったかもしれない)、トレーニングの考え方や種類を学んだり、毎回トレーニングをしてそれを記録することが評価の対象で、受講時の運動能力そのものは基本的に成績とは関係なかったので、高校までとはだいぶ違うなあと思ったのだった。

私の友達は、大学で舞踊が専門の先生から体育の授業を受けたことがあるそうだ。バレエの型をやったり、色々なストレッチをしたりして、身体の筋肉のしくみとか使い方を知るような授業で、自分の身体の概念を覆される授業だったとのこと。これまで何となく「知っている」と思っていたことの新しい見方を学べて、それを通して自分自身の興味に気付けたりするのも、大学の授業の役割なのかもしれない。

大学の授業は、多くの場合、これまでの常識から離れて学問することの入り口をやるのに対して、英語の場合は大学でも何かの手段として扱われがちで(言語学としての英語は別)、授業は高校までとの連続性が一番あるように思われているかもしない。それは授業担当者から見てもそうかもしれない。しかし、たとえ言語学という形ではなく、語学の英語であっても、英語との新しい出会いにしてもらえるようなことを自分は授業を通してやりたい。すぐには実践としてできなくても、そういったものを目指したいと思う。

関連記事:
英語の間接疑問とカンマ:間違いの背後にあるもの
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2015年09月07日

ハ行、バ行、パ行の発音とオノマトペ

私が大学院でやっているのは、言語学分野での英語研究なのですが、言語学というと、何やらとっつきづらく感じられるかもしれません。でもそんなに難しく考えないで、とりあえず普段使っている言葉の不思議を見つけ、それを説明するための考え方や道具立てだと思ってみてください。

今回は、日本語の発音について考えてみましょう。日本語は、カ行に対してガ行、サ行に対してザ行のように、濁点の有無による対立が見られます。ハ行は、バ行(濁点)、パ行(半濁点)と三者の対立のように思われていますが、実は発音の仕組みを考えると、カ行/ガ行の対立に相当するのは、パ行/バ行なのです。試しに「ぱぴぷぺぽ、ばびぶべぼ」と発音してみてください。両方とも発音するときに唇が一回ずつ閉じたと思います。一方、「はひふへほ」は口を開けたままでもなんとか発音できるでしょう。つまり、発音時の口の動かし方から言えば、ハ行はパ行/バ行とはちょっと違うのです。

ハ行が仲間外れであるというのは、私たちが使うオノマトペ(擬声語)にも反映されています。日本語のオノマトペには、「さらさら」(肌触り)や「とろとろ」(粘り気)に対して、「ざらざら」「どろどろ」のようなペアが見つかる場合があります。前者は心地よさ、かわいらしさが感じられやすく、後者は不快感や荒々しさが感じられます。ハ行、バ行、パ行のオノマトペを考えると、「ぺろぺろ/べろべろ」(なめる音)と「ぱくぱく/ばくばく」(食べる音)のように、快/不快のペアとなるのはパ行とバ行です。発音の仕組みがパ行/バ行と異なるハ行は、オノマトペの上でもおもしろい違いを見せます。「へろへろ」(疲れ)は「ぺろぺろ/べろべろ」とは無関係ですし、「はくはく」は「ぱくぱく/ばくばく」に対応しないどころか、そもそも意味をなさない表現です。

このように、今までわかっていたつもりの言葉を新しい視点から捉えることができるのが、言語学のおもしろさです。発音については以下の記事にも書いているので、よかったら見てみてください。

関連記事:
発音からみることばのおもしろさ ― 「がっきゅうぶんこ」となぜ言えない?
発音からみることばのおもしろさ2 ― 否定のin-のバリエーション
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2015年08月31日

夏の思い出

7月後半から8月にかけては、なんだかいろんなことがありました。イギリスに行ったり、勉強会を開いたり、研究会のお手伝いをしたり、学会発表の準備をしたり。

そういえば、この時期にあまり仕事をしないでいられるのも久しぶりでした。自分の場合、博士課程に入る前から働いていて、高校の非常勤講師や河合塾(K会というコース)では夏期講習も担当していたため意外と8月も何らかの授業をすることがありました。今年はそういうのがまったくなかったので、わりと図書館のために大学行ったりもできたましたし、ただボーっとする時間もあったりで贅沢な時間でした。今後の人生どうしていきたいかなど考えるきっかけもあって、落ち着いた時間も必要ですね。秋はけっこう忙しくなりそうなので、来年以降のことも見据えつつ、計画的に進められればと思います。
タグ:日記
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2015年07月12日

英語学習に便利なウェブサイト(3):学習方法とテスト作成方法

英語学習に便利なウェブサイトを紹介する記事の第3弾です。第1弾は無料で音声または映像が利用できて、さらにその書き起こしが手に入るもの、第2弾は医学・医療分野に限定したものを見ましたが、第3弾は科学記事を扱ったものを紹介します。科学記事としては、第1弾ですでにScientific Americanを紹介していますが、今回はそれと比較しながらふたつのウェブサイトを見ることにします。そのうえで、複数のウェブサイトを利用した英語学習法や英語テストの作り方を考えてみます。

Science Update
○最新の科学情報についての簡単な解説。音声とその書き起こしから構成されている。
○Scientific Americanの60-second Scienceの音声は、1分(60秒)と言いながら実際には2分前後のものもあるのに対して、こちらは確実に1分に収められているので、さらに手軽に英語に触れることができる。
○毎回研究者(論文の著者)本人の声が聴けるのが特徴。もとの論文へのリンクなどはないので、別途検索が必要。

Science Daily
○科学情報について、文字のみの記事または映像の二つの形式で紹介。映像に書き起こしはない。
○Health、Physical/Tech、Environment、Soceity/Educationのジャンルに分かれている。各ジャンルはさらに細分化されて記事・映像がまとめられている。
○Story Source(もとになった研究機関の発表などへのリンク)、Journal Reference(もとになった論文が掲載されている雑誌へのリンク)があるのも便利。
○スマートフォン向けに最適化された画面が用意されており、アプリ版もある(App SoreGoogle Play)。

以上のように、科学記事を紹介するウェブサイトが複数あるわけですが、これは英語を勉強したり、英語教材を作成する上で効果的に活用できると思います。たとえば、以下の二つの記事の抜粋を見てみましょう。

[A] Scientific American 60-second Science "Animals Can Be Given False Memories"
Scientists trained bumblebees to expect a droplet of sugar water from two artificial flowers: one that was solid yellow, the other looking like an archery target of black and white rings. A few minutes later, (1)the insects were allowed to choose between those two flowers and a third one that had yellow rings, (2)a combo of the previous patterns. In this short-term test, the bees correctly showed a preference for the petals they’d seen had the sweet stuff.

[B] Science Daily "Bumblebees make false memories, too"
To find out, Chittka and Hunt first trained bumblebees to expect a reward when visiting a solid yellow artificial flower followed by one with black-and-white rings or vice versa. During subsequent tests, (1')bees were given a choice between three types of flowers. Two were the yellow and the black-and-white types they'd seen before. The third type of flower had yellow-and-white rings, representing (2')a mixed-up version of the other two. Minutes after the training, the bees showed a clear preference for the flower that most recently rewarded them. Their short-term memory for the flowers was good.

[A] はScientific American 60-second Scienceから、[B] はScience Dailyから取ってきました。(1)や(2)などの番号や下線はこちらで加えています。どちらもbumblebee(マルハナバチ)の記憶に関する研究を紹介していますが、用いられている表現はある程度異なることがわかります。そのため、同じ内容を伝える複数の表現を知ることができたり、何度も同じ語に触れることで語彙を定着さえることが期待できます。(同じ内容を言い換えることについては、以前「英語で論文を書く(2):同じ表現を何度も使わないために」でも取り上げました。)

たとえば、(1) と (1') を見ると、(1) に出てきた (the insects were) allowed to choose between... という表現は、(1') の (bees were) given a choice between... とも言い換えられることが学べるでしょう。また、(2) a combo of the previous versionsは、(2') a mixed-up version of the other twoに対応していることがわかります。

今度は授業で [A] を扱ったことを想定して、そのテストをつくることを考えてみましょう。リーディングテストで授業で扱った文章を繰り返し出題する以外にどんな方法があるか、というのはなかなか悩みどころだと思います。これに関して、印南洋氏は「そのままの本文の後に本文の要約を空欄補充式で提示」するというやり方を紹介しています(『英語教育』2014年9月号, p. 62)。

これを実践するにあたって、上記のように [A]、[B] のような同一テーマの英文を手に入れることができると非常に便利です。たとえば、[A] を提示したあとに [B] の一部を空所にして、穴埋め問題 [B'] を行うことができます。以下のように、空所 (ア)、(イ) を用意して指定した文字から始まる語を [A] から抜き出す、という問題をつくってみました。

[B'] 穴埋め問題
To find out, Chittka and Hunt first trained bumblebees to expect a reward when visiting a solid yellow (ア. a     ) flower followed by one with black-and-white rings or vice versa. During subsequent tests, bees were given a choice between three types of flowers. Two were the yellow and the black-and-white types they'd seen before. The third type of flower had yellow-and-white rings, representing a mixed-up version of the other two. Minutes after the training, the bees showed a clear (イ. p     ) for the flower that most recently rewarded them. Their short-term memory for the flowers was good.


すると、[A] の文章を参照しながら [B'] の問題を解くことになるので、[A] の復習にもなると思います。[A] を十分わかっている学生であれば空所に必要な語をすぐに書いてそれを [A] で確認することができますし、[A] の勉強が不十分だった学生でもその場でがんばればなんとか解答にたどりつく可能性があります。わからなければあきらめるしかない問題とは違って、そういうチャンスがあるのはおもしろい問題かなと思います。ちなみに、解答は (ア) artificial、(イ) preferenceです。

というわけで、今回はScience UpdateとScience Dailyを紹介したうえで、ウェブ上の複数の科学記事を利用した英語学習、英語テストについて考えてみました。今後も英語学習や英語の授業に使えるウェブサイトを探していきたいと思います。

参考文献
印南洋. 2014.「リーディングテストの作成方法」『英語教育』第63巻第6号(9月号), 62-63.

関連記事:
英語学習に便利なウェブサイト(1)
英語学習に便利なウェブサイト(2)
英語学習に便利なアプリ
英語で論文を書く(2):同じ表現を何度も使わないために
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2015年06月01日

5月の思い出

5月も終わって、大学の二学期制の授業はその半分が終わったことになります。例年はもう半分終っちゃったか、と思うことが多いのですが、この5月はいろんなことがあって、ゴールデンウィークもけっこう前のことのように感じます。

もちろん一番の思い出は五月祭です。前に告知した通り、東大の五月祭で言語学喫茶というのを出店しました。ちょっと珍しい海外の飲み物や軽食を提供しながら、言語学を紹介するポスターがあったり、楔形文字を書く体験ができたり、いろんな言語のあいさつ講座があったり。幸い、いずれも好評だったようで、うれしく思います。とても多くの人に来ていただけて、二日間盛況でした。特に楔形文字の体験は人気で、順番待ちがあるぐらいでした。企画の中心は学部生の後輩だったので、自分はそれのお手伝いをしただけですが、関わらせてもらってよかったなと思っています。

ポスター自分も一つ作って展示していたのですが、喫茶業務の合間に立ち止って見てくださると話をしたりしました。一日目にポスターを写真に撮って帰る方もいたので、二日目は持ち帰り用の縮小版ポスターを用意したのですが、50部用意して足りなくなるぐらいでした。多くの人に興味をもっていただけたようで、本当にありがとうございました。言語学の学会でもポスター発表という形式があるのですが(決められた時間にポスター展示をして、興味をもってくれた人に解説したりその場で質問に答えたりしながらやる学会発表)、ポスター発表で50部もハンドアウトを配ることはないので、びっくりしました。

他大学の知り合いや高校のときの同級生なども来てくれて、ありがたかったです。高校の同級生はもう社会人なので、そういう人に言語学の話をするのはちょっと新鮮でもありました。大学院生になって学園祭に参加できると思っていなかったので、久しぶりに大学生のような気分でとても楽しかったです。

東大の言語学研究室は、過去にも何度か言語学喫茶をやっていて、来年もやるかどうかはまだわかりませんがきっとまたやることがあると思うので、そのときはまたお知らせできればと思います。

関連記事:
東大五月祭で言語学喫茶やります!
タグ:日記
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2015年05月15日

東大五月祭で言語学喫茶やります!

5月16日、17日の土日に、東京大学本郷キャンパスで五月祭が行われます。私の所属する言語学研究室では言語学喫茶を出店することになりました!ちなみに、言語学研究室とは、文学部の言語学専修課程と大学院人文社会系研究科の言語学専門分野をひとまとめにしたものです。こちらは、言語学研究室のキャラクターLinguistくん(顔がアルファベットでできています)。
Linguist.jpg

2015年度第88回東京大学五月祭
■言語学喫茶■

日にち:5月16日(土)・17日(日)
場所:法文1号館(西)3階文316
時間:終日
地図など詳しくはこちら

言語学喫茶では、モルスというロシアのベリージュースなど、海外の珍しい食べ物や飲み物を提供する一方、いろんな言語のあいさつを紹介したり、言語学がどんなものか、学生はどんな研究をしているのかなどをポスターにして展示します。ポスターは言語や言語学について素朴な疑問に答えるものから、本格的な研究紹介まであります。言語学研究室では、扱う言語も研究方法もさまざまですが、それぞれがどんなことをしていて、どんなところをおもしろく思っているのか、伝わればいいなと思います。以下の9つのポスターがあります。

●言語学ってそもそも何なの?
●6分くらいで分かるかもしれない標準語と関西弁のアクセント
●北方ユーラシアの諸言語
●言語の数体系
●楔形文字の歴史
●イディッシュ語とその歴史
●New interpretations: Recognizing the non-canonical subject in modern Standard Arabic
●言語学的に英語を見てみよう―認知言語学の視点から―

ぜひ近くの学生と話をしてみてください。私の担当は「言語学的に英語を見てみよう―認知言語学の視点から―」です。言語学って何?文法って何?英語学って何?認知言語学って何?認知言語学的な文法研究って何?というのを書いています。私が部屋にいるときは、直接ご紹介します(土曜日午後と日曜日午前はだいたいいると思います)。

TwitterFacebookのアカウントもあるので、よろしければそちらもどうぞ。以下のように、言語学喫茶の情報をお伝えしています。楔形文字を書く体験もできますよ!

高校生から大人、大学院生まで幅広く楽しめる企画になっていると思いますので、お時間ある方は、ぜひお越しください!(前日のお知らせですみません^^;)

関連記事:
5月の思い出
タグ:言語学 日記
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2015年04月23日

英語学習の「5分+54年」を目指す

スマートフォンのアプリでできるゲームはたくさんありますが、最近は子供のころにやったゲームの移植版なども見かけます。ドラゴンクエストは特によくやったゲームなので、広告など見ると久しぶりにやりたくなります。以下の動画はスマートフォン版「ドラゴンクエストV」のプロモーション映像です。



ドラクエと言えば、この動画でも流れている「序曲」が有名ですね。ドラクエシリーズを代表する「これぞドラクエ」の音楽ですが、作曲家のすぎやまこういち氏によると、たった5分足らずで思いついたメロディだそうです。

5分で作曲というと、すぎやま氏にとっては簡単な行為のように感じますが、それは表面的な捉え方にすぎないでしょう。すぎやま氏自身はこう語っています。

「序曲」のメロディに関しては出来上がるまでに5分かからなかったかな。
30年前の曲で、今再び人気の「亜麻色の髪の乙女」のメロディは車で運転中に急に浮かんだメロディなのです。それでよく著作権に関して「たった5分で出来た曲にしては、ずいぶん稼げていいね。」と言われるのですが、これは5分ではないのです。ドラゴンクエストの「序曲」を作ったとき、僕は54歳の時です。ですから、「序曲」が出来上がるまでには「5分+54年」と考えてください。つまり、僕の54年間の人生が無ければ、あの「序曲」は出来なかったわけです。
すぎやまこういち氏のウェブサイトから)

「5分+54年」という表現に重みがありますね。それまですぎやま氏が作曲家として活動してきた背景、そして今まで経験してきたことのすべてがあってこその5分であることがわかります。

これは、人生のあらゆるところで当てはまることかもしれません。英語など、外国語の勉強でもそうですね。今読んでいる英語の本がわかるかどうか、英語で会話して相手の言うことが聞き取れて、それに応じた返事ができるかなど、それまでに触れてきた英語、それまでにやってきた英語学習で得たことのすべてが問われていると言えます。

これは、英語を読むのに苦労したり、うまく言いたいことが表現できなかったときに、なんで今までもっと真剣に英語の勉強をしてこなかったんだろうという気持ちにもつながりますが、一方で、今後も積み重ねていけばいつかもっと読める、もっと話せるようになる、という希望にもなります。自分の周りには英語がよくできる人が何人もいますが、その人たちがそれまでに英語に接してきた背景を感じつつ、自分も英語学習の「5分+54年」を目指してがんばっていきたいと思います。

関連記事:
忘れる ― 外国語を学ぶコツ
「魂の満足」としての語学
英語の勉強量なんて、みんな同じようなもの?
語学の上達のために必要なことを考える
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2015年03月31日

飯間浩明著『辞書を編む』を読んで

今回、新しく採用された項目の中にも、「盲点だった」と思われることばが多く入りました。たとえば 「見ろ」なんていうのもその例です。「見ろ」は動詞 「見る」の命令形でしょう、と言われるかもしれませんが、感動詞としても使います。 「見ろ、だから言わないこっちゃない」の 「見ろ」は 、「ほら」「言ったとおりだろう」といった意味合いで発することばです。動詞 「見る」として説明するよりも 、感動詞 「見ろ」を新たに立てたほうが自然です。(飯間浩明『辞書を編む』「第3章 取捨選択」より)

言語学を勉強しているというと、辞書にも詳しいと思われるかもしれないが、言語学と辞書の関係は、一般的に思われているよりは近くないのかもしれない。辞書をつくる上で言語学が生かされるのはまちがいないが、言語学の知見がそのまま利用できるというものでもない。だれに向けてどんな目的で辞書をつくるのか、使用者が望む辞書はどんなものか、商品化するにあたってどんな制約があるかなど、辞書には辞書の事情がある。言語学の研究上、さまざまな形で辞書を参照するが、とりあえず自分の場合は、それだけでは必ずしも辞書に詳しくなるわけではなかった。でも辞書のことをもっと知りたいという思いもあって、手に取ったのが飯間浩明著『辞書を編む』(光文社新書、2013年)だった。Twitterで飯間先生の日本語観察の鋭さと誠実な語り口を拝見して、飯間先生の本を一冊読んでみたいと思っていたというのもある。

『辞書を編む』では、著者の飯間先生が編纂に携わった『三省堂国語辞典 第七版』(以下、『三国』)に関する話を中心に、辞書の魅力、『三国』とほかの辞書のちがい、日々の生活の中での用例の採取、意味を記述することの難しさやおもしろさなどが語られている。説明が丁寧でわかりやすく、また飯間先生の実体験なども多く書かれているので、小説『舟を編む』で辞書に興味を持った人はもちろん、これまで特に辞書についてあまり意識したことがないという人でもきっと楽しめると思う。

読んでいて、英語学習との関連で印象に残ったことを書いておきたい。冒頭で引用したように『三国』では、「見る」のほかに「見ろ」を新項目として追加している。言われてみると、たしかに、「見ろ」は単に見ることを指示するとき以外にも使っていることに気づく。実際に『三国』を引いてみると、「見ろ、今のせりふ聞いたか」という例文が載っている。一見何の変哲もない表現ように見えるが、日本語を母語としない人からすると「見る」なのに「聞く」なのか、と混乱してしまうかもしれない。なぜ「見ろ」に人の注意を引くことばとしての用法があるかは、とりあえず深入りしないが(言語学ならそれも研究対象になる)、ある語が特定の活用形を取ったときに、ほかの活用形よりも偏った用法に特化していたり、独自の用法を発展させているというのは、英語でも見られる。

たとえば、動詞consume(消費する)は、energyやoilなどのエネルギーを表す語やtimeなど時間を表す語と使う。これがconsumingという形になると、time-consuming(時間がかかる)のようにtimeとともに使うことが顕著に増える。また、consuming passion(燃えるような情熱)のようなフレーズも比較的定着しているようだ(be consumed with passionのように、passionがほかの活用形のconsumeと使うこともないではないが、使用例はかなり少ないようだ)。

実際、英英辞典などを見ると、consumingやtime-consumingはそれぞれ独立した見出しで解説されていることが多い。英語を学習する身からすると、consumeという語を知っていると、その一活用形のconsumingをわざわざ辞書で確認しなかったりするが、こういうとろこに注意を向けていないと、consuming passionを「消費する情熱」などと考えて、わかるようなわからないような状態になったり、「時間がかかる」というときにサッとtime-consumingを思いつかなかったりするかもしれない。

このように、特定の活用形に、それ以外の活用形から必ずしも予測できない用法が見られることはわりとあって、そういった面にも気を配りながら英語を学習するのが重要になるのだが、個人的にはそれを日本語を例にして実感できるような思いで本書を読んでいた。辞書づくりと外国語学習は、意外と似たところもあるのかもしれない。

ほかにも「来る」とは別に「来た」を新項目として立てた話も出てくる。人に何か頼まれたときに答える「よし来た」という用法や「コンビニもないときたもんだ」といった用法では、たしかに「来る」とは(関連しつつも)だいぶ離れた用法だと感じられる。それでも、母語話者としては特に違和感もなく普通に使っているところがおもしろいなと思う。日本語の辞書をつくる人というのは、まるで日本語を自分が知らない言語であるかのように新鮮な気持ちで眺めることが必要なのだろう。飯間先生の観察には、そういう新鮮さにあふれていて、読んでいて爽快感があった。

あと、「潔い」が「いさぎ・よい」と分解されたことから生じる「いさぎのよい」「いさぎない」などについても言及があった。これについては、「「いさぎ悪い」という表現を考える」という記事で自分も以前取り上げたことがあって、飯間先生と同じ現象に関心をもったことをうれしく感じた。

ちょうど『三国 第七版』の編纂中に書かれた本なので、『三国』の改訂に関わる話が多いが、この本を読んだらきっと『三国』を手に取ってみたくなるだろう。現在はスマートフォン用のアプリ版も出ているので、さらに気軽に『三国』に触れることができる。

なお、英語のconsumeの話は、以下の本を参考にした。実際に自分でもコーパスと呼ばれる用例のデータベースを検索してみた(Corpus of Contemporary American English)。
Stubbs, Michael. 2001. Words and Phrases: Corpus Studies of Lexical Semantics. Oxford: Blackwell.

辞書を編む (光文社新書) -
飯間浩明
辞書を編む
光文社新書


三省堂国語辞典 第七版 -
三省堂国語辞典 第七版

関連記事:
「いさぎ悪い」という表現を考える
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2015年02月10日

英語学習に便利なアプリ

先日、英語学習に便利なウェブサイトについて書いたら、思いのほか多くの人に見ていただけました。今回は、スマートフォンで使えるアプリをご紹介しますね。アプリとはいっても、ウェブ上でも利用できるので、スマートフォンを使っていない方にも役に立つ部分があると思います。なお、いずれも無料です。

Studyplus(App Store)Studyplus(Google Play)
○「勉強の記録で習慣化!「Studyplus」学習管理ができる無料アプリ」という宣伝文句からわかるように、自分の勉強時間を記録するのに役立つアプリ。自分で設定した教材(市販の書籍やアプリを選んだり、独自設定の教材も登録できる)ごとに勉強時間を記録する。ウェブサイトはこちら
○一日ごと、一週間ごと、一か月ごとの勉強時間をグラフにしたり、どの教材に勉強時間を配分しているかを見直すことができるので、自分自身の行動を知るのに便利。
○自分の学習管理だけでなく、SNSとしても利用できる。タイムラインには自分が友達申請した人の勉強ログが流れる。どちらかといえば、大学受験生を主なターゲットにしているように思われるが、大学生・大学院生や資格試験にむけて勉強している社会人でも利用している人はいるようなので、勉強仲間を見つけてみよう。


Urban Dictionary(App Store)Urban Dictionary(Google Play)
○俗語、若者言葉など、市販の辞書に記載がないような語句のためのオンライン辞書。一般の辞書と違い、ユーザーからの投稿で成り立っている。一つの語句に対して複数の説明が投稿されていたり、各説明に対してそれが妥当かの評価がついていたりするのが特徴。
○ドラマに出てくる表現、文字通りに取ると意味不明な表現など、これを見て解決することも多い。
ウェブサイトはこちら。Urban Dictionary自体は比較的知られているものの、アプリの存在は意外と知らないかもと思い掲載。アプリでサクッと引けるのはやはり便利。


らじる★らじる(App Store)らじる★らじる(Google Play)
○インターネットを利用して、NHKのラジオ(第1・第2・FM)を聴くことができる。ウェブサイトはこちら
○英語学習としては、ラジオ第2で放送している各種英語講座を聴くのに使えるのがありがたい。アプリでは聴きたい番組のアラーム設定が可能なので、放送時間を忘れてしまう人に最適。
○現在どんな講座が開かれているかは、NHKゴガクというウェブサイトで確認しよう。ちなみに、NHKゴガクで無料の利用登録をしておくと、前の週に放送したのを一週間分ストリーミングで聴くことができる。放送時間に聴けないない人、復習したいけどCD買うほどではない人などにおすすめ。実際には「らじる★らじる」よりこっちのほうが便利かも。


先日、春から英語教員になる方とお話しして、やっぱりNHKのラジオ講座はいいよねという話題になりました。その方は遠山顕先生の「ラジオ英会話」を聴いているということで、番組の構成がよく練られているのがわかる、とのことでした。そのとき、ウェブでも聴けるし、アプリもあるというのを知らなかったようなのでお伝えしました。もしかしたら、意外と知られていないかなと思い、aあわせていくつかのアプリも取り上げてみました。ちなみに、私も遠山先生が好きで、長期休みのときは聴くようにしています。柴原智幸先生の「攻略!英語リスニング」も聴いています。

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posted by ダイスケ at 19:37| Comment(0) | 学習・教育 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする