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2014年06月22日

忘れ物として回収させて頂く場合がございます

もう1ヶ月以上前ですが、先日ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン2014に行ってきました。ラ・フォル・ジュルネは、もともとはフランスのクラシック音楽の祭典で、短期間の間にたくさんのコンサートが行われます。それの日本版であるラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポンは、毎年ゴールデンウィークに行われていて、今までに何度か行ったことがあります。今回は、チャイコフスキーの「ピアノ協奏曲第1番」などを聞いてきました。

今回取り上げたいのはコンサートの話ではなく、そこで見かけた看板についてです。日ごろから、気になる表現を見つけたら写真に撮っておくようにしているのですが、コンサート会場にもおもしろい表現がありました。

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「お手荷物やパンフレットでの席確保は、ご遠慮ください。忘れ物として回収させて頂くことがございます。」

意味は十分にわかるし、看板として問題があると言うつもりもないのですが、一点おやっと思ったところがあります。「回収」の使い方です。

「回収」の意味について考えてみます。「回」はまわる、あるいは、まわった結果元の場所に戻る、というときに使い、特に後者の用法には「回帰」「挽回」などがあります。「収」は集める、取りまとめるという意味で、「収集」「収穫」といった表現に使われます。

この「回」と「収」を合わせた「回収」は、「所有していたものを手放し、再びそれを自分の元に集める」といった意味になると考えてよいでしょう。「アンケートを回収する」「商品に不備があったため回収する」といった用例があります。したがって、「忘れ物を回収する」は「(忘れ物をした人が)忘れ物を自分の手元に取り戻す」という意味で使うものだと言えるでしょう。

看板を見て引っかかったのは、忘れ物を回収する主体が、忘れ物をした人ではなくて、会場の運営側だということです。この場合、物を手放した人とそれを集める人が同じではありません。「回収」が上記で述べたような意味だとすると、看板が警告しているような出来事は「回収」とは言いにくいことになります。

もしかしたら、運営側は「没収」や「撤収」などの語を最初に思い浮かべたものの、それらは否定的なイメージがつきまとうので、もう少し穏やかな語を探して、「収」つながりで「回収」にたどりついたのかもしれません。もしそうであれば、「回収」という語が選ばれたのもわかる気がします。

結局、コンサートそのものよりもこの看板のほうが印象に残ってしまいましたが、日本語について考えるよいきっかけになりましたし、ちょっと変わった表現を見たときの違和感がどこからくるのか探り出すのは楽しいことなので、それはそれでよかったです。


*****

「回収」の意味についての補足

「回収」で少し注意が必要なのは、「廃品回収」「資源回収」などの使い方です。廃品を回収する場合、廃品が元々の製造業者の手に戻るわけではないでしょう。では、「廃品回収」は単に廃品を集めるだけの意味なのかというと、そうではないと思います。廃品の再利用、リサイクルが目的で集める場合にしか「廃品回収」とは言えないのではないでしょうか。そうであれば、(a) 製品を製造・加工する者→ (b) 製品を利用する者→ (a') 製品を(再)加工する者という流れができ、厳密には (a) と (a') が同じではなくても、「回収」の枠に収まるのだと言えます。

生ごみを家庭からごみ処理場に運ぶ車は「ごみ収集車」であって、「ごみ回収車」はちょっとおかしい気がするのですが、もしこの直感を他の人にも受け入れてもらえるなら、それは生ごみは処理するだけで再利用することが前提ではないから、「廃品回収」と違い「ごみ回収」とは言えないからだ、という説明になります。このあたりの区別はあいまいにして使われることもあるかもしれませんが。
ラベル:日記 誤用 日本語
posted by ダイスケ at 23:24| Comment(0) | ことば | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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