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2013年01月06日

英語の同族目的語構文:現象と文献の紹介

学校の英語の授業では、目的語を取る動詞を他動詞、目的語を取らない動詞を自動詞と呼ばれていることを習う。ただ、実際には、典型的には他動詞だと考えられている動詞でも目的語を必要としない用法があったり、逆に自動詞だと考えられている動詞でも目的語を伴う用法があったりする。今回紹介する同族目的語構文(cognate object construction)とは、自動詞が(1)のように目的語を取る構文である。

(1)
a. Mary smiled a warm smile.
b. Bill lived a happy life.
c. She sighed a weary sigh.

(1)がおもしろいのは、本来自動詞であるはずの動詞が、その動詞と同形の名詞、あるいは語源的に関係のある名詞を目的語に取る(つまり、同族目的語を取る)点である。同族目的語という用語自体を学校で習うことは少ないかもしれないが、『ロイヤル英文法』(旺文社、2000)や『SEED総合英語 第3版』(文英堂、2010)などの一般向け文法書には記載がある(『総合英語Forest 第6版』(桐原書店、2011)には載っていない。あまり同族目的語構文で困ることはないだろうから、余計な項目を増やさないという意味ではよいのかもしれない)。

一般的に、同族目的語構文に関しては次のようなことが知られている。

A. 同族目的語構文で用いられる動詞は、同族目的語以外の目的語を自由に取ることができない。
B. 基本的には、同族目的語は形容詞などの修飾語句を必要とする。
C. 意味上は動詞+副詞に近い。


そのため、(2)のような例は容認されない(*の記号で表す)と考えられている。また、(1)の各文の意味は(3)とほぼ同じであると言われている。

(2)
a. *Mary smiled me.
b. *She sighed a sigh.

(3)
a. Mary smiled warmly.
b. Bill lived happily.
c. She sighed wearily.

しかし、(4)のように、AやBに沿わないような例もあるし、動詞+副詞で言い換えられない例も存在する。

(4)
a. Mary smiled a silly grin. (意味上関連はしているが、同族ではない目的語が用いられている)
b. John danced a dance.(形容詞などの修飾語句がない)
c. *She dreamed strangely. (She dreamed a strange dream.は容認可能)

そのため、一般的に同族目的語構文と言われる構文は、実際には一枚岩ではないことも指摘されている。では、同族目的語構文にはどのような下位分類があるのか、A-Cに合わないのに容認されるのはなぜなのか、動詞+副詞の場合と意味が完全に同一というわけでないとしたらどのような違いがあるのか。このような問題を巡って、言語学では以前から多くの議論がなされている。

実は、同族目的語構文には以前から興味があって、修士論文で扱おうと思ったこともあったのだが、結局は違うテーマを選んだ。そのときに調べた文献情報をそのままにしておくのももったいないので、文献リストを作ってみた。同族目的語構文に興味のある方は参考にしてみてください。文献は今後も追加する予定。

■Dixon, Robert M. W. 2005. A Semantic Approach to English Grammar. Oxford: Oxford University Press.
■Höche, Silke. 2009. Cognate Object Constructions in English: A Cognitive-Linguistic Account. Tübingen: Gunter Narr Verlag Tübingen.
■Horita, Yuko.1996. English cognate object constructions and their transitivity. English Linguistics 13, 221-247.
■堀田優子. 2005. 同族目的語構文のカテゴリーに関する一考察.『金沢大学文学部論集 言語・文学篇』25, 67-88.
■Jones, Michael A. 1988. Cognate objects and the case filter. Journal of Linguistics 24, 89-110.
■木原恵美子. 2008. 同族目的語構文の認知構造: 軽動詞構文との比較を通じて. 『言葉と認知のメカニズム: 山梨正明教授還暦記念論文集』 31-45. 東京: ひつじ書房.
■北原賢一. 2006. 現代英語における同族目的語構文の実態: 構文文法的観点から. 『英語語法文法研究』13, 51-65.
■北原賢一. 2011. 動詞dieと同族目的語構文: 語彙・構文的アプローチによる記述. 『英語語法文法研究』18, 63-78.
■Langacker, Ronald W. 1991. Foundations of Cognitive Grammar Vol. II: Descriptive Application. Stanford: Stanford University Press.
■Levin, Beth and Malka Rappaport Hovav. 1995. Unaccusativity: At the Syntax-Lexical Semantics Interface. Cambridge, Mass.: MIT Press.
■Moltmann, Frederika. 1989. Nominal and causal event predicates. CLS 25, 300-314.
■Massam, Diane. 1990. Cognate objects as thematic objects. Canadian Journal of Linguistics 35, 161-190.
■Matsumoto, Masumi. 1996. The syntax and semantics of the cognate object construction. English Linguistics 13, 199-220.
■中島平三・池内正幸. 2005. 『明日に架ける生成文法』 東京: 開拓社.
■Nakajima, Heizo. 2006. Adverbial cognate objects. Linguistic Inquiry 37, 674-684.
■大室剛志. 1990-1991. 同族 ‘目的語’ 構文の特異性(1)-(3). 『英語教育』39(9)-(11).
■大室剛志. 2000. 特定的な同族目的語について.『英語教育』49(6), 29-31.
■大室剛志. 2002. 有標構文における有標性.『英語語法文法研究』9, 35-50.
■大室剛志. 2004. 基本形と変種の同定にあずかる大規模コーパス: 同族目的語構文を例に.『英語コーパス研究』11, 137-151.
■大室剛志. 2005a. 構文の基本形と変種: 文法事項の配列順序への示唆. 『国際開発フォーラム』 29, 91-105.
■大室剛志. 2005b. 基本から特殊へ: 同族目的語構文を例に. 『英語教育』 54(5), 63-65.
■大室剛志. 2007. 形式と意味のミスマッチと同族目的語の決定詞. 『英語青年』152(11), 19-21.
■Rice, Sally. 1988. Unlikely lexical entries. BLS 14, 202-212.
■高見健一・久野ワ. 2002. 『日英語の自動詞構文』 東京: 研究社.

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posted by ダイスケ at 03:32| Comment(0) | 言語学の紹介 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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