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2011年04月06日

Verbs and Times その3

Vendlerの論文"Verbs and Times"の紹介も3回目。今回はthinkとknowの用法を説明している部分。おそらく学校では、knowの意味は、「知る」ではなく「知っている」と習うと思うけれど、Now, I know it!という言い方もあると知って、新鮮だった。

論文中では、他にseeの用法や、これまでに示した分類方法と助動詞canの関係なども扱われているが、とりあえず論文紹介はこれで一区切りつけることに。

最後になったが、著者の紹介を。Zeno Vendlerは、1921年ハンガリーに生まれる。ハーヴァード大学で哲学を学び、のちにカルガリー大学(カナダ)の哲学の教授となり活躍する。同大学退職後もいくつかの大学で教えていたが、2004年にこの世を去る。享年83歳。言語学では広く知られた古典的な論文の著者だが、意外と最近まで生きていたと知ってちょっと驚いた。

*****

Suppose someone is trying to solve a problem in mathematics. Suddenly he cries out "Now I know it!" [...] Now I know it! indicates that he did not know it before. (p.112)

Thinkの用法(pp. 109-111)
ここまでに見たように、多くのactivity(活動)とaccomplishment(達成)、achievement(到達)は派生的なstate(状態)の意味がある。今度はthinkを見てみよう。

Thinkには二つの基本的な意味がある。He is thinking about Jones. とHe thinks that Jones is a rascal. では、thinkの機能が異なる。前者はactivity(活動)であり、後者はstate(状態)である。後者の文は寝ている人物について言ったとしても正しいが、前者の文ではそれは当てはまらない。He was thinking about Jones for half an hour. では、その期間のすべての部分において〈thinking about Jones ジョーンズについて考えてい〉たといえる。しかし、He thought that Jones was a rascal for a year. では、必ずしもその時間のどの瞬間でも〈thinking about Jones, a rascal いたずら好きのジョーンズについて考えてい〉たとはいえない。

Think thatとthink aboutの関係は、habit(習慣)の意味のsmokeとactivity(活動)の意味のsmokeの関係と同じではない。Think thatは様々な種類の活動に基づいている点で、どちらかといえばruleに似ている。つまり、generic state(一般的状態)である。一方、thinkerの状態はspecific state(特定的状態)である。Thinkerは〈thinking about ponderous matters 重々しいことを考えること〉にたびたびたずさわっている人のことである。
(以下の図は、本文をもとに自分で作成)
Verbs_and_times_3.jpg

Knowの用法(pp. 111-112)
Believe thatは容易にgeneric state(一般的状態)だとわかる。同じようにknow thatもgeneric state(一般的状態)である。だが、And then suddenly I knew it! やNow I know it! の場合はどうだろうか。これはachievement(到達)のように思える。たしかに、この洞察的な意味のknowはachievement(到達)のカテゴリーに入るだろう。しかし、knowにachievement(到達)とstate(状態)の意味があるのは、それはcatch a dogにachievement(到達)とstate(状態、dogcatcherにおけるspecific state特定的状態)の意味があるのとは関係ない。それはむしろget married(achievement到達)とbe married(generic state一般的状態)の関係に近い。

ある人が数学の問題を解いていたとする。突然、その人がNow, I know it!と叫ぶ。その十分後にその人はその解法を私に教えてくれた。もちろんHe still knows it.であり、それは彼が解法を説明するのにひらめきが必要でないことを意味する。He knows it.(state状態の意味で)である限り、論理的にはHe will know it.(achievement到達の意味で)は起こりえない。つまり、achievement(到達)のknowはstate(状態)のknowの始まりを意味している。このことと、〈start running走り始める(achievement到達)〉が〈run走ること(activity活動)〉の開始であることとは区別しなければならない。なお、understandについても同様のことがいえる。
(以下の図は、本文をもとに自分で作成)
Verbs_and_times_4.jpg


関連記事:
Verbs and Times その1
Verbs and Times その2
posted by ダイスケ at 04:39| Comment(2) | 言語学の紹介 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
"Now, I know it!"って日本語で叫んだとしたら、「分った」ってことになるんですよね。だから形からしたら「現在完了」に近い感じになる。日本語の場合、時制としての「過去」とアスベクトとしての「完了」の違いが形で区別できなくなってる訳ですよね。

ドイツ語だったら"Jetzt weiss ich's"とか"Ich hab's"ってことになる。ドイツ語には「進行」を表す方法が"Am X sein"というのを除いて文法化されていないから、副詞gerade なんかで補うことになる。「知らない(*知ってない)」とか「知ってる(*知る)」ってのは直説法現在形と同形"wissen/kennen"になる訳ですよね。こういう違いって面白いですよね。
Posted by Joschl at 2013年06月04日 18:19
テンス、アスペクトをどれくらい形の上で区別するかっていうのは、言語によって違っていておもしろいですね。

はじめてドイツ語を習ったときに、英語の現在進行形にあたる形式がないことに驚きました。英語の現在進行形と日本語の「-ている」という表現は、対応するようでいて違うところも多かったりと、かえって似ている表現があるほうがややこしいかもしれませんが。いずれにせよ、テンス、アスペクトと動詞の種類の問題を考えるきっかけになった、思い入れのある論文です。
Posted by ダイスケ at 2013年06月07日 15:46
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