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2011年04月03日

Verbs and Times その2

前回に引き続き、Vendlerの"Verbs and Times"という論文の紹介。

前回にも少し言及したが、高校では英語の授業で「動作動詞」と「状態動詞」というのが紹介されることがある。前者が進行形になる動詞、後者が進行形にならない動詞だ。だが、この両者は必ずしもはっきりと区別できないのではないかと、授業で習ったときに思った。たとえば、playは動作動詞、beは状態動詞だと分類できるが、その一方でHe plays tennis well. をHe is a good tennis player. と書き換える問題を思い出し、なぜ動作動詞と状態動詞を使った文が書き換え関係にあるのかと不思議に感じた記憶がある(当時は疑問をそこまで明確な形で表現できなかったが)。

Vendlerは、そうした用法を「習慣」という用語を用いて説明している。高校のときの疑問に対する手掛かりを得てわくわくしながら読んだ個所です。

*****

Habits (in a broader sense including occupations, dispositions, abilities, and so forth) are also states in our sense. Compare Are you smoking? and Do you smoke? (p. 108)


分類の精密化(pp. 103-107)
It took him three hours to reach the summit. やHe found it in five minutes. を見るとachievement(到達)とaccomplishment(達成)を混同してしまうかもしれない。しかし、少し考えれば誤解が明らかになる。It took me an hour to write a letter.(これはaccomplishment(達成))は、その時間の間〈writing of a letter 手紙を書く行為〉が続いていたことを意味する。しかし、It took three hours to reach the summit.(これはachievement(到達))は、その時間の間〈reaching of the summit 頂上に着く行為〉が続いていたことを意味しない。意味するのはIt took three hours of climbing to reach the top.である。〈I write a letter in an hour. 1時間で手紙を書く〉のであれば、その間のどの時間でも〈I am writing a letter. 手紙を書いている〉といえる。しかし、〈It takes three hours to reach the top.頂上に着くのに3時間かかる〉のであれば、その間のどの時点でも〈I am reaching the top. (無理やり日本語にすると)頂上に着いている〉とはいえない。

時間スキーマを別の観点から見てみよう。Activity(活動)はひとつに限定されていない時間が必要である。これに対して、accomplishment(達成)はひとつの限定された時間を含意する。achievement(到達)はひとつの限定された瞬間を必要とし、state(状態)はひとつに限定されていない瞬間を含んでいる。

主な用法(pp. 107-108)
これまで概念的な道具をつくり洗練させてきたので、実際にそれがどのように使えるかを示してみることにする。非常に多くの動詞は完全に、あるいは少なくとも主要な用法については今まで見てきたうちのひとつのカテゴリーに入る。以下はその例である。

■activity(活動)
run, walk, push or pull something
■accomplishment(達成)
paint a picture, make a chair, write or read a novel
■achievement(到達)
recognize, realize, lose or find an object, reach the summit
■state(状態)
have something, like somebody, know or believe things


習慣を表す用法(pp. 108-109)
Habit(習慣、広い意味で、保有、位置、能力などを含む)は、ここでの意味にしたがえばstate(状態)である。Are you smoking? とDo you smoke? を比較してみよう。前者はactivity(活動)について尋ねているのに対して、後者はstate(状態)についてである。このちがいがわかれば、なぜ、a worker for the General Electric Company.〈General Electric Companyに勤める人〉がビーチで肌を焼いているときでもHe works for General Electric. といえるのかがわかる。

習慣の意味をもつのはactivity(活動)だけではない。Writer は〈write a book 本を書く(accomplishment 達成)〉人であり、dogcatcherは〈catch a dog 犬を捕まえる(achievement 到達)〉人である。

ここで、cabdriverとrulerについて考えてみよう。Cabdriverは実際に〈drive a cab タクシーを運転する〉ことがあるが、rulerは実際には〈rule a country 国を統治するという行為〉はしていない。つまり、〈drive a cab タクシーを運転する〉のに相当するような特定の行動としての〈rule a country 国の統治〉はしてはいない。〈Drive a cab タクシーの運転〉はひとつの行動といえるが、rulerが行うはずの行動はたくさんありさまざまなものである。Smoker、painter、dogcatcherの状態をspecific state(特定的状態)と呼び、ruler、servant、educatorの状態をgeneric state(一般的状態)と呼ぶことにする。
(以下の図は、本文をもとに自分で作成)
Verbs_and_times_2.jpg


関連記事:
Verbs and Times その1
Verbs and Times その3
posted by ダイスケ at 00:22| Comment(6) | 言語学の紹介 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
私は今大学院生で、同じく来年から英語の講師をします。私の研究テーマはJamaican Creoleの見えないテンスの仕組みについてです。動詞の分け方に特徴があるのでVendlerの分け方を参考にして研究している途中で、このブログを見かけました。動詞と時制の関係は奥が深いですよね^^古い記事ですが、気付いていただけたら連絡していただきたいです。
Posted by kanapi at 2012年08月23日 14:38
kanapiさん、コメントありがとうございます!

Jamaican Creoleの研究、おもしろそうですね。ぼくの場合、普段の研究は英語についてばかりですが、もっといろんな言語をやってみたいなと思っていたところなので、ぜひお話を聞いてみたいと思いました。学会などでもお会いできるといいですね!
Posted by ダイスケ at 2012年08月26日 00:18
ご無沙汰してます。ドイツ語の強変化動詞のことで、コメントを書いたことがあるJoschlです。上の記事を読ませていただいたんですが、内容はtenseというよりも、動詞の分類(ドイツ語ではAktionsartenと言いますけど)なども含めてaspectの問題の方が色濃いような感じがしますね。私自身、言語類型論的に「時制とアスペクトの関係ってどうなってんのかな?」ということに興味がるんですが、たとえば「ドイツ語は時制とアスベクトのどっちが強く表に出てんだろう」とか「時制とアスベクトと形態的なマーキングの関係はどうなんだろう?なんでこういう形になって、別の形じゃないんだろう?」という疑問が沸いてきます。こういうことって、言語学的な話をする前に外国語をマスターする上でも有意義な質問じゃないかと思います。ダイスケさんは認知言語学がご専門の様ですが、認知言語学ではどういう説明方法があるんですか?ドイツ語と英語の比較なんかも面白いと思います。
Posted by Joschl at 2013年06月04日 17:35
Joschlさん、お久しぶりです。
おっしゃる通り、この記事は、動詞の語彙的アスペクトのお話です。語学の勉強についても、役に立つと思います。実際に間違いが減ると思いますし、動詞の用法にこのような体系性があると知るのは、モヤモヤしたものがなくなって気持ちがいいとも言えるかもしれません。

アスペクトや時制に関する認知言語学の研究については詳しくないのですが(認知言語学と一口に言ってもいろんな説明がありそうですが)、やはりVendlerの研究はひとつの出発点となっていると思います。独英の違いももっと知りたいなと思っています。
Posted by ダイスケ at 2013年06月06日 23:55
私が英語を日常的に使っていた日々はもう何年も前のことで、英語の文法もままならない感じですが、ダイスケさんがドイツ語を勉強しながら英語との違いなどに気が付いて面白いと感じることがあったら、「ドイツ語」の方へ書いてみてください。

私が一外国人として英語やドイツ語を教わった時には「時制」と「相」の違いや絡み合いなんて知る由もなく、言語学に触れてから「そういうことなのか〜」って目を開いてもらった感じでした。時制と相は、高校の「国語」や「英語」でももうちょっと意識して体系的に教えてもいいんじゃないかなって感じてます(「そんな時間ないよ」と言われればそれまでですが...)。せっかく「古文」の授業で「昔は時制と相の区別がはっきいりしていんだぞ」と教わる訳ですしね。
Posted by Joschl at 2013年06月07日 18:19
最近はドイツ語の勉強ができていないので、あまりドイツ語の話題は書けないかもしれませんが、ドイツ語はまた勉強したいと思っています。

何をどこまで教えるかは、悩ましい問題ですね。教員同士でも言語学者の間でも、意見が分かれそうです。

ぼく自身も高校で英語を教えているわけですが、生徒が他の先生の授業を受けたり他の教材で勉強するときとの整合性を考えると、あまり時制や相の複雑な話をするわけにもいかないなとは感じます。
Posted by ダイスケ at 2013年06月09日 15:23
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