【ブログ紹介】
■大学芋はなんで「大学芋」という名前?「大学」+「芋」=「大学芋」と単純にはいえない。そう考えると、ことばには不思議がいっぱい。「大学芋」をきっかけにことばについて考えるブログです!
■はじめての方はこちらへ

2010年08月26日

見えなくても、聞こえなくても、大切なものはある

言語は、ある意味では、耳で聞くことも、目で見ることもできない側面をもっていると言ったら驚くだろうか。

英語の例を考えてみよう。
英語でdogの複数形はdogs、catの複数形はcatsである。ここで重要なのは、英語話者はdogの複数形とcatの複数形を別々に記憶しているわけではなく、どちらも最後に-sをつければ複数形になるということを知っているということだ。
つまり、dog、catという具体的な単語というよりも、抽象的な〈名詞〉という単位に対して-sを加えるというルールを知っているのだ。
言語は無秩序ではなくある種のルールがあるのだが、それはそのように抽象的なレベルで働くのである。次の場合も同様だ。

(1)
a. He knows the story.
b. He knows the sad story.
c. He knows that she died.

これら3つの文は、単語の数もちがい、見た目がちがうのにも関わらず、いずれも(2)のように言い換えることが可能である。

(2)He knows it.

つまり、英語話者はthe story、the sad story、that she diedは何かの点で同じであると感じているはずだ。そして、それは〈目的語〉と呼ばれる単位でまとめることができるのである。

ここで私たちが問題にしているのは、単語の長さや単語の数といった目や耳で確かめられるものではなくて、〈名詞〉〈目的語〉といった抽象的な単位である。そうであるとすれば、単語の数が少ない文は易しい、多い文は難しいとも限らないことになる。
逆にいえば、単語の数は長くて一見複雑でも、〈目的語〉などの抽象的な単位からしてみれば単純な文、単語の数が少なくても実は複雑な文というのもありえることがわかる。

英会話の本では、『ネイティブならだれでも知ってる簡単フレーズ』のようなタイトルのものがある。そうした本には「短くてやさしいフレーズを使って、英会話を学ぼう」などと書かれていたりする。
短くても便利なフレーズもきっとあるだろうし、それの応用範囲が広いならばどんどん覚えてよいと思うし、それも学習法のひとつとしてありだ。

しかし、単語の数が少ないから簡単だ、長い文は難しくてダメと思うならば、言いかえれば、目や耳で直接感じることのできるものだけに頼っていたら、それは危うい。
言語は抽象的な単位を利用しているということに気づき、その上で必要そうなフレーズがあるならそれを取り込んでいくという柔軟性が大切だろう。

参考文献
Isac, D. and C. Reiss. 2008. I-Language. Oxford University Press.
ラベル:英語教育
posted by ダイスケ at 04:47| Comment(0) | 学習・教育 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。