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■大学芋はなんで「大学芋」という名前?「大学」+「芋」=「大学芋」と単純にはいえない。そう考えると、ことばには不思議がいっぱい。「大学芋」をきっかけにことばについて考えるブログです!
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2009年10月30日

不思議であーる ― ドイツ語の前置詞

今回はドイツ語の前置詞。
ドイツ語では、代名詞が前置詞と合体することがある。
いきなりドイツ語だとこの記事を読んでくれる人が少なくなりそうなので、まずは英語から。

(1)
a. I work with the computer.
b. I work with it.

英語では、(1a)のthe computerを代名詞itにしたら、(1b)になる。
ドイツ語においては、(1b)の「with it」を合体させて、「itwith」(もちろん英語にはこんな語はない)のような形にすることができる。
(1)に対応するドイツ語は(2)になる。

(2)
a. Ich arbeite mit dem Computer.
b. Ich arbeite damit.

(2)のドイツ語は、(1)の英語と語順が同じなので、ich = I のようにそれぞれの単語が対応すると考えてほしい。
英語のときの(1b)の「with it」に相当するところがドイツ語では「damit」になっている。
英語のように前置詞+代名詞なら、「mit ihm」となるのだが、ドイツ語では物事を表す人称代名詞(英語のit)が前置詞と用いられる場合、ひとつにまとめてしまう。

このようにドイツ語では、「da- + 前置詞」という代名詞と前置詞の結合形があるのだが、前置詞が母音ではじまる場合は「dar- + 前置詞」になる。
発音しづらいためか、rを挟み込む。
(3)が「da- + 前置詞」、(4)が「dar- + 前置詞」の例である。
()にはほぼ対応する英語も示しておいた。

(3)
a. dadurch (durch = through)
b. dabei (bei = by)
c. dafür (für = for)

(4)
a. daran (an = on)
b. darüber (über = over)
c. darunter (unter = under)

それにしても、なぜ挟み込むのがrなのだろうか?
母音が連続するのを避けるだけなら、ほかの子音でもよさそうな気もする。
不思議だな。
そして、もっと不思議なのは、日本語にも同じようにrを挟む現象があることだ。

さて、日本語で母音の連続を避けるためにrを挟むときとは、どんなときでしょう?
次回の記事を更新するまでに考えてみていただければ幸いです。
(マニアックな問題だなあ 笑)
posted by ダイスケ at 01:32| Comment(8) | ことば | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
今日は、今回は簡潔にしますね。日本語で連続母音の回避のために/r/が挿入されるものには、「見る・寝る・する・来る」などの動詞があります。この動詞の/r/は、語幹末の子音とも語尾の子音とも取れますから五段活用動詞の語尾とは違います。その他/n/(天皇ten-nou)や/s/(春雨haru-same)などがありますね。流音や鼻音は発音上不安定な音なので、多くの言語で挿入音として利用されています。/s/が母音に挟まれると/r/と交替するのも (was-were、ドイツ語でも中世ではwas-warenと変化しました)、偶然ではないです。
Posted by Joschl at 2014年04月04日 21:53
コメント、ありがとうございます。
こういう問題は、音声学・音韻論や歴史言語学・比較言語学の知識が必要ですね。それらの知識があると身近な疑問が解決できたりしておもしろいなと思います。

流音や鼻音が挿入音として使われやすいとのことでしたが、「春雨」の場合は/s/という摩擦音が挿入されるのはなぜなのでしょうね。「霧雨」や「村雨」でもそうですが。wasとwereの話はヴェルネルの法則を習ったときのことを思い出しました。
Posted by ダイスケ at 2014年04月06日 23:36
なぜ/s/なのか?私にも分りません。句だったものがくっ付いたのかもね(何かの助詞の名残り?)。暇があったら日本語専門の方に聞いて下さい)。だけど、/n,t,d,l/などの「歯音」が挿入音として利用され易いという傾向には合いますね。
Posted by Joschl at 2014年04月07日 17:19
もともとは句であった、などの可能性は考えられるかもしれません。そうであれば少々複雑なプロセスを経ていると思われますし、挿入される前後の音なども考慮したほうがよさそうですよね。「春雨」の/s/について、歯音が挿入音として利用されやすいということでまとめてしまっていいことなのかは、これだけではちょっとわからないなと思いました。
Posted by ダイスケ at 2014年04月09日 17:07
ダイスケサンの仰る通りです。「本来sameであったものがameになった」という説や「haru tsu ameという句がはharu-s-ameという複合語になった」という説もあるようですね。この問題は、日本語の変遷に精通していないと解けないです。何れにせよ、「これだ!」と確定できる資料は残っていない様です。だた、共時的に「歯音が挿入音として利用され易い」と言う事と、春雨の/s/が挿入音と解釈されて一般入門書に一例として好んで言及されるということには関係があるでしょう。歴史的に起こった事実は何かという事と現代人がその変化の結果をどう解釈するかは、まったく別物ですからね。この「春雨問題」について、ネットでこんなの見付けました。ご覧下さい。「ことば会議室」 http://kotobakai.seesaa.net/article/8173686.html
Posted by Joschl at 2014年04月09日 19:10
やはり歴史的にはいろいろな経緯が考えられるのですね。共時的に見れば「春雨」の/s/が挿入音として解釈される(解釈されてもいい)というのは問題ないと思います。ただ、もしそれを「歯音が挿入音として利用されやすい」ことの一例として捉えるなら、他にも/s/が挿入される例を合わせて出していただいたほうが納得しやすいかなと感じました。あまり/s/が挿入される場合が思い浮かばなかったのですが、「真っ青」なども/s/が挿入されたと考えてもよさそうな例ですね。実際にはもう少し複雑でしょうが、少なくとも/s/の部分については、共時的には挿入だと考えられてもよいものだと思いました。
Posted by ダイスケ at 2014年04月10日 23:43
「真っ青」の接頭辞「真」は音韻形態論的にも色々と話題になっているみたいですね。
学生の頃、日本語音韻論の勉強をした時期がありましたが、その時にちょくちょく手にしたTimothyVance 氏のAn intorduction to Japanese phonology という本に、どんな例が掲載されていたか、もう覚えていません。
今回も良い勉強になりました。有難うございました。
Posted by Joschl at 2014年04月11日 16:32
「真っ赤」「真っ二つ」など、「真」は興味深いですね。日本語や別の言語でもこうした現象が分析できるとおもしろそうです。ぼくは比較言語学や音声学・音韻論はかじった程度なのですが、やはりちゃんと勉強したいなと思いました。こちらこそありがとうございました。
Posted by ダイスケ at 2014年04月12日 00:09
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