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2009年03月13日

Metaphors We Live By 第4章

第4章、方向づけのメタファー。
メタファーについて勉強するようになってから、日本語の中のメタファーにも気づくようになった。この読書会をやっているときに、たまたま飲んでいたほうじ茶のペットボトルに「上質な香り」と書いてあって(うろ覚え、たしかそんな感じ)、これは「良いことは上」のメタファーだなと。いかにメタファーが日常的な表現に浸透しているかがわかる。

ただ、難しいのはこうしたメタファーがあることがわかっても、実際に使われる語彙のすべてがわかるわけではないことだ。たとえば、英語と同様、日本語にも「嬉しいことは上、悲しいことは下」というメタファーがある。たとえば、「気分は上々」という表現。しかし、「気分は下々」とは言わない。「彼は落ち込んでいる」と「彼は落ち着いている」は同じ「落ちる」ということばを使いつつも、その意味するところはだいぶちがう。

どんなことばが使われ、どんなことばが使われないか。
なぜある表現は慣用的で、ある表現は慣用的でないか。
不思議だけど、おもしろい。

*****

4. Orientational Metaphors
We will call these orientational metaphors, since most of them have to do with spatial orientation.(p. 14)
They have a basis in our physical and cultural experience. (p. 14)


これまで扱ってきたのは、「構造のメタファー」(structural metaphors)、つまりある概念が他の概念が他の概念を通すことで、メタファーによって構造を与えられる場合である。しかし、メタファーには別の種類のものがある。ある概念の全体系を他の概念との関係によって構成するものである。それは「方向づけのメタファー」(orientational metaphors)とよばれる。というのは、こうしたメタファーの多くは、上―下、内―外、前―後、着―離、深―浅、中心―周辺といった空間の方向性に関係があるからだ。方向付けのメタファーは、ある概念に空間的方向性を与える。

メタファーに使われる方向性は恣意的なものではない。肉体的経験と文化的経験に基づいている。上―下、内―外は物理的性質のものだが、それらに基づく方向のメタファーは文化によって異なりうる。

実際に上―下のメタファーを見てみよう。そのメタファーが生まれる基盤についても言及してみる(あくまで示唆するにとどまるもので、決定的な説明だとは考えていない)。

HAPPY IS UP; SAD IS DOWN
I’m feeling up. My sprit rose. That boosted my spirits. I’m feeling down. I’m depressed. My spirit sank.
肉体的基盤:悲しいときはうなだれた姿勢であり、元気なときはまっすぐした姿勢である。

HEALTH AND LIFE ARE UP; SICKNESS AND DEATH ARE DOWN
He’s peak of health. He’s in top shape. He fell ill. He came down with the flu.
肉体的基盤:重い病気であれば人は横たわり、死ねば倒れた状態になる。

HAVING CONTROL OR FORCE IS UP; BEING SUBJECT TO CONTROL OR FORCE IS DOWN
I have control over her. His power rose. He is under my control. His power is on the decline.
肉体的基盤:体が大きいと体力もある。戦いの勝者は上に立つ。

MORE IS UP; LESS IS DOWN
The number of books printed each year keeps going up. My income rose last year. The number of errors he made is incredibly low. His income fell last year.
肉体的基盤:容器の中や山積みのものに、物質や物体を加えると高さが上がる。

RATIONAL IS UP; EMOTIONAL IS DOWN
The discussion fell to the emotional level, but I raised it back up to the rational plane. We put our feelings aside and had a high-level intellectual discussion of the matter.
物理的文化的基盤:人間は他の動植物を支配している。人間がすぐれているからであり、理性的にものを考えることができるからだ。そこで、CONTROL IS UPがMAN IS UPの基盤になり、さらにそれがRATIONAL IS UPの基盤となっている。

以上のことから、次のことを結論として提案したい。

・私たちの基本概念は、一つあるいはそれ以上の空間関係づけのメタファー(spatialization metaphor)によって構成されている。

・空間関係づけメタファーには内的な体系性がある。HAPPY IS UPは孤立した無関係の例集まりではなく一貫した体系を示している。

・空間関係づけメタファーには、メタファー間の外的な体系性もあり、それがメタファー間に一貫性(coherence)を与えている。GOOD IS UP、HAPPY IS UP、HEALTH IS UPとALIVE IS UPの関係、STATUS IS UPとCONTROL IS UPの関係は一貫している。

・メタファーの肉体的・社会的基盤となりうるものは多くある。なぜあるものが選ばれ、他のものが選ばれないか、その理由の一部は全体の体系の一貫性にようようだ。たとえば、happy is wide(例としてI am feeling expansive.〈大らかな気持ち〉がある)よりもhappy is upが主要なメタファーであるのは、good is upやhealthy is upとの一貫性によるのだろう。

・肉体的・文化的な経験は空間関係づけのメタファーの基盤となるが、どの基盤が選ばれ、主要なものとなるかは、文化によって異なる。

メタファーの基盤となる経験については、まだよくわかっていない。ただ、どんなメタファーも、その経験上の基盤から切り離せば、理解できず十分に表現されることはない。異なった経験に基づいているため、一致しないメタファーもある。UNKNOWN IS UP(例はThat’s up in the air.〈未決定〉やThe matter is settled.〈落着〉)はUNDERSTANDING IS GRASPINGと経験の基盤は似ている。しかし、GOOD IS UPやFINISHED IS UPとは一貫していない。それは経験の基盤が異なるからである。

関連記事:
Metaphors We Live By 第1章
Metaphors We Live By 第2章
Metaphors We Live By 第3章
Metaphors We Live By 第6
Metaphors We Live By 第8章
Metaphors We Live By 第9章
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認知言語学キーワード紹介(3):メタファーと経験基盤主義
posted by ダイスケ at 02:37| Comment(0) | 言語学の紹介 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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