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2009年03月07日

Metaphors We Live By 第3章

第3章は、メタファーを用いた理解では焦点が当たるところと隠れてしまうところがあると述べられている。
認知言語学の入門書で多少メタファーについては知っていたつもりだったけど、本によってはあんまりこの点はちゃんと紹介されていなかった気がする。
やっぱり原書にあたる必要はありますね。

*****

3. Metaphorical Systematicity: Highlighting and Hiding
The very systematicity that allows us to comprehend one aspect of a concept in terms of another will necessarily hide other aspects of the concept.(p. 10)


メタファーの体系性によって、私たちはある概念の一側面を他のものを通して理解することが可能になるが、これは必然的にその概念の他の側面を隠すことにもなる。メタファーから成る概念により概念のある側面には焦点が当たるが、メタファーとは一致しない他の側面には焦点が当たらなくなってしまう。たとえば、議論のもつ戦闘的側面にとらわれると、議論の協調的側面はしばしば見落とされてしまう。

さらにとらえにくい例は、「導管メタファー」(conduit metaphor)において見られる。それは言語についての私たちの言い回しに関するメタファーであり、次のような複合的なメタファーによって構造化されている。

IDEA (or MEANING) ARE OBJECTS.〈考え(あるいは意味)は物である〉
LINGUISTIC EXPRESSIONS ARE CONTAINERS.〈言語表現は容器である〉
COMMUNICATION IS SENDING.〈コミュニケーションは送ることである〉

話し手は考え(物)をことば(容器)につめてそれを(導管を通して)聞き手に送る。聞き手は考え(物)をことば(容器)から取り出す。いくつか実例をみてみよう。

The CONDUIT Metaphor
It is hard to get that idea across to him.〈通じさせる=わからせる〉
I gave you that idea.〈あげる=教える〉
Your reasons came through to us.〈伝わる=腑に落ちる〉
It’s difficult to put my idea into words.〈ことばの中に入れる=ことばにあらわす〉
The sentence is without meaning.〈意味がない〉
The idea is buried in terribly dense paragraph.〈文章の中に埋もれる〉

これらの例から、メタファーによって何が隠されているのか気づくのは難しい。そもそもメタファーがあると気づくことすら難しい。それだけ言語について言及する表現が慣習化しているのだ。しかし、導管メタファーが含意するものをみれば、コミュニケーションのプロセスのいくつかの側面が隠されていることがわかる。

まず、導管メタファーのLINGUISTIC EXPRESSIONS ARE CONTAINERSという側面は、語や文が文脈や話し手とはとは無関係に意味をもっていることを含意し、MEANINGS ARE OBJECTSという側面 は、意味そのものも人や文脈とは無関係に存在していることを含意する。

しかし、文脈が問題となる場合も多くある。次の文は実際の会話の中で記録された有名な例である。

Please sit in the apple-juice seat.

文脈を抜きにすると、この文はまったく意味をなさない。しかし、この文が発話された文脈のなかでは完全な意味をもっている。朝食時に四つの席があり、そのうち三つにオレンジ・ジュース、一つにアップル・ジュースが置いてあった。apple-juice seatが何を意味しているかは明らかであった。

We need new alternative sources of energy.という文は、石油会社の社長が言うのと環境保護団体の会長が言うのとでは、意味するところはまったくちがう。文に意味があるのか、あるならどんな意味があるのかを決めるのに文脈が必要とされる場合には、導管メタファーは当てはまらないのである。

これまでみた例から、メタファーから成り立つ概念は、コミュニケーション、議論、時間について部分的な理解しか与えないことがわかる。そのため、これらの概念の他の側面を隠してしまう。メタファーが与える構造が関わるのは部分的であり、全体ではないのだ。たとえば、時間は実際にはお金とはちがう。時間を使う(spend your time)ことはできても、それを取り返すことはできない(can’t get your time back)のだ。

メタファーから成り立つ概念は文字通りの意味を超えていわゆる比喩的な、詩的な思考やことばにまで拡張されうる。 概念がメタファーによって構造化されるというのは、概念は部分的にメタファーによって構造を与えられるということであり、またある面には拡張できるが他の面にはできないということを表す。

*****

言語を研究する人にとっては、朝食時の何気ない会話からも考えのきっかけが生まれるってことを実感する。
でも、それは普段から言語のことを考えていた結果だろう。
最初からアンテナを張っていないと、いくらそうした表現に出会ってもキャッチできないだろうから。


関連記事:
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Metaphors We Live By 第2章
Metaphors We Live By 第4章
Metaphors We Live By 第6
Metaphors We Live By 第8章
Metaphors We Live By 第9章
Metaphors We Live By 第11章
認知言語学キーワード紹介(3):メタファーと経験基盤主義
ラベル:英語 メタファー
posted by ダイスケ at 11:22| Comment(0) | 言語学の紹介 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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