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2013年06月30日

英語の間接疑問とカンマ:間違いの背後にあるもの

先日、高校の授業で間接疑問を扱った。一般的に、疑問文が文の一部として取り込まれた場合、それは間接疑問と呼ばれる。たとえば、(1)は独立の疑問文だが、それを文の中に取り込むと(2)になる。

(1) Who is he?(彼は誰ですか)
(2) I don't know who he is.(私は彼が誰であるか知らない)

なお、whoやwhatなどの疑問詞を用いない疑問文を取り込む場合は、ifもしくはwhetherを用いる(ここでは、全部まとめて間接疑問として扱う)。

(3) He asked me if [whether] I was going back to Japan.(彼は私に日本へ帰るのかと尋ねた)

高校での間接疑問のポイントのひとつは、 独立の疑問文のときと異なり、平叙文と同じ語順になることだろう。というわけで、英作文の問題を出してみた。ちゃんとした語順で書けているか確認したかったが、やっぱりそのあたりの間違いが多かった。

あまり想定していなかったのは、途中にカンマ(, )を入れる生徒がいたことだ。(4)のような日本語を英語に直す場合、解答例として(5)の英文が挙げられるが、(6)のように書いてくる生徒がわりといた(もちろん、もっといろいろと間違えている生徒もいるが)。

(4) 今日郵便局が開いているかどうか教えていただけませんか。(問題)
(5) Could you tell me if the post office is open today?(解答例)
(6) Could you tell me, if the post office is open today?(誤答例)

英語では、この場合カンマは不要である。授業にはそのような例は出てこなかったはずだ。インプットの素材として与えるものが正しいものでも、いつの間にか思い込みや勘違いが入り込んでしまい、アウトプットの段階でおかしなことになっている、そしてそれに気づかないというのは、よくあることだ。講師になってからは特にそれを実感しているので、間違いが多そうなところは先回りして注意を促そうと思っているが(いつも先回りできるわけではないけど目標にはしている)、今回はそういう間違いの可能性に事前に気づけなかった。

もしかしたら、生徒は実際の会話を直接引用する場合(直接話法)と混同したのかもしれない。さきほどの(3)を直接話法で示すと(7)となり、カンマを必要とする。こういう混同があるなら、今度はそのあたりのことも説明しようかと思う。

(7) They asked me, "Are you going back to Japan?"

そして、個人的におもしろいなと思ったのは、実はドイツ語では(6)のような表現が正しいということだ。(4)の問題文をドイツ語にすると、(8)となる。

(8) Können Sie mir bitte sagen, ob die Post heute offen ist?

細かいところは置いておくとしても(können=can、sagen=tell、ob=if、heute=today、offen=openのような対応関係がある)、ドイツ語では、この場合カンマを用いるのがわかる。実際にこうやってカンマを使う言語もあるわけだから、生徒の間違いもそんなにおかしいものだとは言えなくなる。ドイツ語を母語とする人だったら、生徒と同じような英語の間違いをしているかもしれない。

生徒の英語の間違いは、一見すると、正確に覚えておらず、勘違いして勝手なことをしているだけのようにも思える。だが、その間違いは、(a) 似ている表現からの類推をしていたり、(b) 実際に言語としてはありえる(ただし英語にはない)ものを思いつくような、言語に関する鋭い直観を働かせた結果なのかもしれない。だとすれば、たとえ英語のテストでは間違いであったとしても、そこで使った発想は大事なものだと伝えたい。そういった発想でうまくいったりうまくいかなかったりという試行錯誤をすることで、そして、うまくいかなかったところは実際にはどう表現するのかをきちんと覚えることで、語学は上達するのだと思う。

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posted by ダイスケ at 02:34| Comment(0) | 学習・教育 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年06月15日

勉強と研究:今後やること

6月も半分終わりました。博士課程に進んでからもう2ケ月半です。ぼーっとしていたわけではないですが、やりたいことをちゃんと意識しておかないと、どんどん時間が過ぎ去っていくなあと思います。

ということで、今回は自分の頭の中を整理する意味も込めて、博士課程でやっていくことをメモするついでに、簡単に紹介しようと思います。以下では、知識や技能を身につけることを「勉強」、身につけたことをもとに自分なりに言語の分析をして、その成果を公開することを「研究」と呼ぶことにします。

(1) 勉強
a. 語学:英語、ドイツ語
b. 言語理論:認知言語学や機能主義言語学(認知・機能言語学)、生成文法など
c. コーパス言語学、自然言語処理
d. 言語類型論、対照研究
e. 認知科学、心理学

(2) 研究
a. 何をどのように分析するか考え、実践する
b. 学会で口頭発表をする
c. 論文を書いて投稿する

まず肝心なことは、(1a) しっかり英語の勉強をすること。他の大学院生の学会発表を聞いたり、いっしょに勉強することも多いし、業績の数という指標もあるので、研究能力についてはある程度他人と比較しやすでしょう。しかし、英語がどれくらいできるかは、あまり比較できる機会がないので、いつの間にか差がついているところだと思います。英語のことをよくわかっていないと、間違った分析をしていることに気づかない可能性も出てきますし、英語をちゃんと教えることができるかどうかにも直結しますし、もっと英語学習の時間を取らないとなあと思います。英語とドイツ語の比較もおもしろそうなので、ドイツ語の力もつけておきたいのですが、なかなか時間が取れず...

言語学の勉強については、理論的な側面 (1b) と、どちらかといえば技術的な側面 (1c) があります。実際には、コーパス(コンピュータで読み込むことができる形態のテクストの集積からなるデータベース)を使うかどうかを判断する時点で、特定の言語の見方が関わってくるので、(1c) も理論とは切り離せないのですが。また、コーパスを使うにしてもコーパス言語学と自然言語処理では、関心というか目標が違うので別の分野といえます。コーパス言語学もまだまだな上に、自然言語処理には疎いのですが、できるだけ幅広く研究のヒントを得られればと思います。

身近に英語以外の言語を研究している人もいることもあって、(1d) 言語類型論や対照研究には、以前よりも興味が増しています。英語の分析をするにしても、他言語の知識があると新しい糸口が見つかったりするものです。そして、自分の研究で直接参照しないとしても、(1e) 認知科学全般、心理学との接点を探ることは、自分自身が何を明らかにしようとしているのか、それはどのような意味があることなのかを把握する上でも重要だなと感じます。

研究をすると一口に言っても、(2a) 人知れずコツコツやる部分と (2b,c) それを公開する部分とがあります。どんな学会で何回ぐらい発表するかなどは人によるので、自分自身でペースを管理する必要があります。学会で口頭発表できるなら、研究内容はしっかりあるはずなので論文も書けるはずなのですが、口頭でサッと言えたことでもいざ文字にしようとするとうまく言葉が思いつかなかったりします。そんなときは、言葉の問題と言うよりは論理展開がスムーズでなかったり分析の詰めが甘かったりすることに気づいたり。論文はごまかしがきかないので、より真剣に自分の研究に向き合うことになります。

英語講師としての仕事もあるので、あんまり欲張ることもできず、どれにどれくらい時間を割くかというのが問題になります。大学の授業や大学院生同士の勉強会でカバーできない (1a) 語学の時間を確保しつつ、 (2) 研究(特に論文)を地道に進めるというのが、今の自分にとっては必要かなと思います。がんばろ。
ラベル:日記 語学 研究
posted by ダイスケ at 04:03| Comment(0) | 日々の出来事 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする