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2011年04月08日

英語学・英文学の新しい交流を目指して:『英語青年』をきっかけに

今回は、『英語青年』という雑誌をきっかけに、英語をめぐる諸学問の関係について考えてみたい。

『英語青年』とは、英語学、英文学、英語教育などの話題を扱った英語に関する総合雑誌である。1898年創刊、2009年休刊。現在はウェブに移行し、『Web英語青年』として残っている。

100年以上続いた『英語青年』の休刊に対する反響は大きく、朝日新聞の朝刊にも取り上げられた。休刊については、学生のころ『英語青年』を読んでいたという方々からの休刊を惜しむ声や出版業界の不況、あるいは学術誌の電子化といった話題が取り上げられることが多かったように思うが、ここで少し別の側面に注目したい。

そもそも休刊するほどに販売部数が落ち込んでいたのはなぜだろうか。その理由のひとつは、英語学、英文学の専門分化にあると思う。

かつて、それら研究分野は「英語」の名のもとにゆるやかにつながっていたが、だいぶ前からそのつながりを実感するのは難しい状況になっていたように感じる。いわゆる英文科と呼ばれるころでは、英語に関わる言語学と文学を学ぶことになっているが、その関心やアプローチはかなりの程度に異なる。実際に両者の教授が研究上の交流をしていることも少ないような印象を受ける。ある時期までは、英語の語法的・文法的研究は文学作品を読む上でも重要であるという認識があったようだが、言語学の独立がはっきりして、文法のメカニズムを探求したり、言語の普遍性の解明を射程に入れるにつれて、言語学と文学の距離は離れていった。

今、英文科は英語をめぐって言語学と文学を学ぶと簡単に説明したが、実は英語学、英文学というのもそれぞれ一枚岩ではない。英語学では、現代英語と英語の歴史を対象とするのでは、扱うべきものが異なるし、現代英語の諸現象を説明するための文法理論も様々である。英文学にしても、数々の批評理論と中世における写本の研究では方法論が違うし、イギリス文学研究とアメリカ文学研究の雰囲気もだいぶ違う。

見方によっては、それぞれの分野が互いに依存しなくてもいいような独立した地位を獲得したともいえるのかもしれない。日本英文学会、日本英語学会といった全国規模の学会がある一方で、最近は分野ごとの個別の学会が設立されている。英文科でも必修の枠が減り、選択科目の英語史を受講することなく英文学や英語学の道に進むことも可能な大学だってあるし、そもそも英文科という看板自体が以前よりも少なくなってしまった。

このような状況からもわかるように、「英語」という共通項だけではそれぞれの領域をつなぎとめることができなっていたのだと思う。『英語青年』の休刊は、その象徴ではないだろうか。英語学の記事だけでも、必ずしもすべての英語学者に共有できるものではないのに、英語学も英文学もすべての記事に目を通すという人がもはやいなくなっていたとしても不思議ではない。昔に比べて、「英語」の総合雑誌を必要とする人が少なくなってしまったのだろう。

しかし、それは英語をめぐる諸学問が相互に交流できないことを意味するわけではない。むしろ、お互いに協力できることをもっと知るべきだと思う。たとえば、文学研究にとって、言語学で明らかにされる言語の一般的な仕組みは、あるテクストの特異性やテクスト間の比較をする上での指標となるだろう。言語学にとって、文学研究の対象となるテクストは、これまでに議論されてきた言語現象(構文など)がどのような形態として実現されているか、あるいは言語の創造性が生まれる可能性を知る上でも得るものが大きいはずだ。

そのような可能性が追求されているとは必ずしも言い切れない状況は、お互いがお互いのことをあまりにも知らない(知る機会が少ない)ことからくるのだろう。知らなければ、お互いが協力できるという発想も生まれない。英語学と英文学がどのような形で影響し合うにせよ、互いの関心・アプローチの違いを知ること、そして、それぞれ自分の専門分野にしか通じない方法ではなくて、互いに分かりあえることばで自分たちの研究成果を語り合うことが必要だ。それは英語を扱う諸学問の新しい協力関係を模索するための出発点となるだろう。

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posted by ダイスケ at 14:35| Comment(0) | 日々の出来事 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする