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2010年12月23日

Metaphors We Live By 第9章

高校生のころ、「先週提出したレポートが返却された」の「先」は過去のこと、「これから先のことはまだ考えてません」の「先」は未来のことを指すと気づいて、なんでだろうと疑問に思ったことがあった。Metaphrs We Live byの第9章では、このような時間表現をどう扱うかが議論されている。日本語にも同じ議論が当てはまるのかも気になるところ。

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9. Challenges to Metaphorical Coherence
We have found that the connections between metaphors are more likely to involve coherence than consistency. (p.44)


メタファーやメトニミーは一貫した体系をなしており、それに基づいて私たちは自分たちの経験を概念化している。一見したところ一貫性がないようにみえるところにも一貫性があることを示してみたい。

An Apparent Metaphorical Contradiction

英語には時間を二つの矛盾したやり方で表現しているように思える。ひとつは、未来は前方にあり、過去は後方にあるとするやり方である。

In the weeks ahead of us… (future)
That’s all behind us now. (past)

もうひとつは、未来は後方にあり、過去は前方にあるとするやり方である。

In the following weeks… (future)
In the preceding weeks… (past)

一見矛盾したメタファーが共存することもある。

We’re looking ahead to the following week.〈翌週のことを先立って考えている。〉

前―後の方向性がいかに系統立てられているかを知れば、この矛盾は解消する。
人間や車のようなものはもともと前後の方向性がそなわっているが、動いている物体は、進行方向が前方となるよう方向づけがなされる。人工衛星は静止している間は前方がないが、軌道に乗って進んでいる間はその進む方向が前方となる。
英語における時間はTIME IS A MOVING OBJECTというメタファーによって構造が与えられており、未来は私たちのほうに向かって動いている。そのため、未来はわれわれのほうに前面を向けていることになる。

The time will come when…
I look forward to the arrival of Christmas.
I can’t face the future.〈未来に向き合う〉

Ahead of us、I look forward、before usという表現は人間との関連で時間を方向づけるのに対して、precedeやfollowは時間との関連で時間を方向づけている。したがって、Next week and the week following it.とは言うが、The next week following me…とは言わない。未来の時間は私たちに前面を向けており、その後に続いている時間はさらに遠い未来となると考えれば、weeks to followとweeks ahead of usは同じ意味になる。(以下の図は内容整理のため、自分で作成)

Metaphors_we_live_by_9_1.jpg

ここで示したかったのは、単に矛盾がないことだけでなく、TIME IS A MOVING OBJECTというメタファーがあり、動く物体であるために前後の方向づけがなされ、follow、precede、faceという語も時間において使われる場合はその用法に一致性(consistency)があるということだ。

Coherence versus Consistency

時間の経過を概念化するには別の方法もある。

TIME IS STATIONARY AND WE MOVE THROUGH IT
As we go through the year,…〈年の中を通り過ぎるにつれて=年を経るにつれて〉
We’re approaching the end of the year.〈年の終わりに近づく=もうすぐ年末〉

TIME PASSES US〈時間が私たちを通り過ぎる〉とき、私たちが動いて時間が静止している場合と、時間が動いて私たちが静止している場合があるのだ。共通しているのは、動きは相対的で未来が前方に、過去は後方にあるということだ。つまり、二つのメタファーが大きな共通の意味を含意している。(以下の図は、本文のものを利用)

Metaphors_we_live_by_9_2.jpg

この二つのメタファーには一致性(consistent)がない(ひとつのイメージを形成しない)が、二つとも大きなカテゴリーの下位範疇でありそのため中心となる意味を共有しているので、つじつまが合う(fit together)。メタファー間の関係は一致性(consistency)よりも一貫性(coherence)をもちやすいといえる。


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Metaphors We Live By 第8章

「Metaphors We Live By」と検索して訪れる方が多いので、第8章以降の内容も少しまとめ直して掲載します。

ここで、Metaphors We Live Byという本について改めて紹介する。本書は、それまで文学や修辞学で扱われてきたメタファーが、実は人間の認知の基本的な営みであり日常の表現に遍在していることを明らかにしたもので、現在「認知言語学」と呼ばれている分野が発展するきっかけにもなった。著者のG・レイコフは言語学、M・ジョンソンは哲学の研究者。

第8章では、メタファーではなくメトニミー(換喩)が扱われている。メトニミーは隣接性に基づく比喩とされている。日本語でも、「今日は鍋を食べよう」と言った場合、「鍋」が指しているのは容器そのものではなく、その容器の中の食べ物であってこれもメトニミーの一種とされる。このように考えると、メトニミーもメタファー同様、あらゆるところで見つけることができる。

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8. Metonymy
Metonimic concepts allow us to comceptualize one thing by means of its relation to something else. (p. 39)


存在のメタファーのひとつに擬人法(personification)がある(たとえば、Inflation robbed me of my savings. )。これは次のような例とは区別すべきである。

The ham sandwich is waiting for his check.
〈ハム・サンドイッチが勘定を待っている。〉

この例では擬人法のときとはちがって、ham sandwichが具体的な人間、つまりハム・サンドイッチを注文した人間を指している。このように、ある存在物(ハム・サンドイッチ)を利用して、それに関係する他のもの(ハム・サンドイッチを注文した人間)に言及する方法はメトニミー(metonymy)とよばれている。

メタファーとメトニミーは異なる種類のプロセスを経てできたものである。メタファーは原則的にあるものを他のものを通して理解する方法であり、その第一の機能は理解することである。一方、メトニミーの主な機能は指し示すことである。メトニミーによって、ある存在物を他のものを表すために使うことができる。しかし、メトニミーは単に指し示すだけでなく、理解させる機能も果たしている。たとえば、THE PART FOR THE WHOLE〈部分は全体を表す〉というメトニミーの例では、全体を代表できる部分はたくさんある。その中のどの部分を選ぶかで、全体のどの側面に焦点を当てるかが決まる。あるプロジェクトにおいて、good headsが必要だといった場合、good headsという表現でintelligent peopleを指している。重要なのは部分(head)を使って全体(person)を指しているというよりも、headに関連したひとつの特徴、つまりintelligentを取り上げているとうことだ。メトニミーはメタファーと同じ目的を、いくぶん似ているやり方で果たしている。しかし、メトニミーは、メタファーよりも指し示されるものの特定の側面に焦点を当てるのだ。メトニミーもメタファーと同様、単なることばづかいの問題ではない。メトニミーによって成り立つ概念も、ことばはもちろんのこと、日常の思考や行動の仕方の一部をなしているのだ。

THE FACE FOR THE PERSONというメトニミーがあるが(We need some new faces around here.など)、これは私たちの文化において大きな役割を果たしている。ある人が、息子の写真を見せてくれと頼んで、息子の顔写真を見せてもらえれば満足するだろうが、顔から下の体だけが写った写真を見せられたら満足しないだろう。顔から人を判断し、それに基づいて行動する場合、私たちはメトニミーに基づいて行動していることになる。

メトニミーによって成り立つ概念にも以下に見るように体系性がある。
THE PART FOR THE WHOLE
We don’t hire longhair. 〈長髪=長髪の人〉
The Giants need a stronger arm in right field.〈強い肩=強い肩をもった選手〉

PRODUCER FOR PRODUCT
He bought a Ford.〈フォード(社名)=フォードの作った車〉
He’s got a Picasso in his den.〈ピカソ=ピカソの絵〉

OBJECT USED FOR USER
The sax has the flu today.〈サックス=サックス奏者〉
The buses are on strike.〈バス=バスの運転手〉

CONTROLLER FOR CONTROLLED
Nixon bombed Hanoi.〈ニクソン=ニクソンが命令した軍〉
Ozawa gave a terrible concert last night.〈小澤(指揮者)=小澤が率いる楽団〉

INSTITUTION FOR PEOPLE RESPONSIBLE
You’ll never get the university to agree to that.〈大学=大学の責任者〉
The Army wants to reinstitute the draft.〈軍=軍の責任者〉

THE PLACE FOR THE INSTITUTION
The White House isn’t saying anything.〈ホワイト・ハウス=米国政府〉
Wall Street is in a panic.〈ウォール街=米国金融業界〉

THE PLACE FOR THE EVENT
Let’s not let Thailand become another Vietnam.〈ベトナム=ベトナム戦争〉
Pearl Harbor still has an effect on our foreign policy.〈真珠湾=真珠湾攻撃〉


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