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2010年03月05日

ことば、意味、ピアノ

次のような文を見たら、どのように思うだろうか。

(1)
a. Colorless green ideas sleep furiously.
b. Furiously sleep ideas green colorless.

(1)はチョムスキーという言語学者が考えた有名な例文である。
チョムスキーはどちらも同じく意味をなさない(nonsensical)と述べている。
それにも関わらず、文法的なのは(1a)だという。
つまり、(1a)は主語と動詞があり、形容詞や副詞の修飾の仕方も間違っていない。
これに対して、(1b)はそもそも文法的に認めることができない。
そのため、言語学の対象とする文法は、意味からは独立しているというのが彼の主張である。

このように言われると、意味を切り離した言語研究の手法を追求してみる価値はありそうだと思えてくる。
ただ、(1a)を最初に見たときの感想は、それは本当に意味がないのだろうかというものだった。

たしかに「無色の緑」や「考えが眠る」は通常考えられない組み合わせであり、意味があるとは言いがたい。
しかし、人間は意味のないところに意味を読み込む動物でもある。
たとえば、鳥のさえずりから「今日はいい一日になりそうだ」と思ったり、一枚の葉が落ちるのを見て人生のはかなさを感じたりすることがありうる。
鳥はただ鳴いただけで、風はいつもより強かっただけかもしれないのに。

そのように考えてみると、意味は客観的に存在するものというより、むしろ人間が見出すものだとも言える。
(1a)から何か意味を読み取ってもいいはずだ。

実際、「無色の緑」のように対立することばを組み合わせる語法は、レトリックの分野では対義結合(oxymoron)として知られている(撞着語法ともいう)。
「慇懃無礼」、「ただより高いものはない」などふだんあまり気づかずに使っているものも多い。

では、「歌詞のない歌」と聞いたら、どんなものを想像するだろう。
歌詞がなければ歌とはいえないはずで、これも対義結合のひとつだといえる。

実は、これはメンデルスゾーンが作った一連の曲のことを指している。
彼は「無言歌集」(ドイツ語でLieder ohne Worte)というピアノの作品を49曲も作っている。
ここに紹介するのは、その中でも「デュエット」とよばれるもの。


その名前が、曲にふくらみをもたせていているようで、とても好きな曲。
みなさんなりに、思い思いの歌詞を思い浮かべて聴いてみてはいかがでしょうか。

参考文献
Chomsky, Noam. 1957. Syntactic Structures. Mouton.
池上嘉彦. 1984. 『記号論への招待』 岩波新書.
 (意味を読み取る主体としての人間について)
佐藤信夫. 1992. 『レトリック認識』 講談社学術文庫.
 (対義結合について)
ふき出しのレトリック
 (マンガに出てくるレトリックを扱ったサイト。おすすめ!)
posted by ダイスケ at 03:11| Comment(0) | ことば | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする