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■大学芋はなんで「大学芋」という名前?「大学」+「芋」=「大学芋」と単純にはいえない。そう考えると、ことばには不思議がいっぱい。「大学芋」をきっかけにことばについて考えるブログです!
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2009年09月23日

はじめてのドイツ語

また、とっつきにくい言葉もほんの少しがまんしてつきあっていると、あるとき突然見通しがよくなって、すばらしい眺望が眼前に開けるということがあります。ドイツ語はそんな言葉です。(p. 284)
福本義憲.1991.『はじめてのドイツ語』講談社現代新書.


何でも教えればよいというわけではない。
これは教育実習で学んだことのひとつだ。
ときにはあえて単純に説明することも、教える側の戦略としてありうるということだ。
単語を教えるときに、いきなり類義語を並べ意味のちがいを説明するとかえって頭がパンクしてまう生徒もいるだろう。
もちろん、それが覚えるときの手がかりになるので教えてほしいという人もいるだろう。
教師は常にそのへんのバランスを考え、何を教え何を教えないか取捨選択する必要がある。

大学でのドイツ語の授業はあまりおもしろかったという印象はない。
文法はこういうのがあるから覚えてね、じゃあ、問題の答え合わせやるよ、という具合で素っ気なかった。

ドイツ語は名詞の複数形の作り方が5パターンもあって、名詞ごとにどれに当てはまるかがちがう。
5パターンといっても、どの名詞がどのパターンになるかまったく予想もできないかといえばそうではなくて、ある程度傾向がある。
大学の授業ではそういう傾向をいっさい習わなかったが、ドイツ語を学び始めたばかりの学生が混乱しないようにと、自分はわかっていてもあえて教えなかったのかもしれない。
(単音節のときは○○、2音節のときは××のような説明が嫌いな人もいるだろう)

授業をする立場を経験すると、授業を受けるときの印象も変わってくるもので、そういう意味でもやってよかったかもしれない。
今にして思えば、当時の先生が説明が面倒でいい加減に授業をやっていたわけでもないのかなと思う(まぁ、熱心という感じでもなかったが)。

ただ、そうした細かいことを知りたいという人もいるだろう。
『はじめてのドイツ語』はそういう人に向いている。

本書はドイツ語学習で疑問に思いそうなところを丁寧に解説している。
先ほど挙げた名詞の複数形の話もこの本ではじめて知った。
他にも、

否定冠詞keinは英語のnoと同じか?
接続法って結局何だ?
完了形にhabenとseinの2パターンあるがその使い分けは?

などの疑問に答えてくれる。
そうだったのか、と思うのは気持ちいい。
他にこういうことを扱っている本はなかなかないので、上記のようなことが知りたい方は読んでみて下さい。

タイトルは『はじめてのドイツ語』だが、ドイツ語をはじめてすぐだとちょっと難しい気がする。
ある程度ドイツ語をやった人が知識の確認と整理するのにおすすめ。

本書は英語との比較による説明も多い。
その説明がわかりやすいだけでなく、英語の文法についても考えさせられる。
ドイツ語学習に役に立つだけでなく、言語学に興味がある人にもいいかもしれない。

「大学芋」はドイツ語を勉強する方を応援します(笑)。

はじめてのドイツ語 (講談社現代新書)

はじめてのドイツ語 (講談社現代新書)

  • 作者: 福本 義憲
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 1991/10
  • メディア: 新書


posted by ダイスケ at 23:27| Comment(2) | 本の紹介 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年09月22日

「冷やす」と「冷ます」2 ― 和語と漢字

以前、「冷やす」と「冷ます」の意味のちがいを考えたが、今度は別の観点からこれらの語を見てみる。

両者を見てまず思い当たるのは、同じ「冷」という漢字を使っていることだ。
「冷」を使う語は他に「冷たい」がある。
ということで、「冷」には三つの読み方があることになる。

日本に漢字が渡来する以前から日本に存在したことばを和語という。
漢字の訓読みは、もともと日本語にあったことばに漢字を当てはめているのだが、これが和語だ。
「冷」の話に戻ると、「ひやす」「さます」「つめたい」という三つの和語に共通の漢字が割り当てられている。
中国語ではこれらを別々に表現する漢字がないということだ。
これは、英語では「兄」と「弟」を別々に表す単語がないのと同じこと。

一方、ひとつの和語に別々の漢字が割り当てられることもある(むしろそのほうが多いと思う)。
「さます」を変換すれば「冷ます」はもちろん、「覚ます」「醒ます」も出てくる。

ここでは、特に後者のひとつの和語に複数の漢字を用いるケースについてもう少し考えてみよう。
「さます」の場合、普段から漢字を使い分けているせいか、それぞれの意味はかなり異なるように思える。
しかし、次の例を見ると、そうとも言えないことがわかる。

(1)熱湯を冷ます
(2)眠気を覚ます
(3)酔いを醒ます

(1)は温度を下げて熱くない状態に変化させることだが、これをもとに考えよう。
人間の体温が上がると頭がボーっとする。
この頭がボーっとしてフラフラする状態は、眠い状態や酔っている状態と似ている。
(医学的はことはわからないけど、実際体温は上がっているのでは?)

だとすると、眠っている状態や酔っている状態(≒熱い)から、意識のはっきりした(≒熱くない)状態への変化を表す(2)(3)との共通点も見えてくる。
異なって見える「冷」と「覚」の漢字が同じ「さます」に割り当てられることも納得できる。
一種のメタファーだと見なしてよいだろう。
(メタファーについてはMetaphors We Live Byの記事を見てください)

パソコンのおかげで気軽に漢字変換できるようになったが、もともとの和語はどんな意味なのか考えると日本語についての理解が深まるように思う。
また、もともとの和語は同じなのだから、あまり漢字の使い分けに神経質になる必要はないかもしれない。
たとえば、「興奮をさます」は辞書の定義に従えば「興奮を冷ます」となり、「興奮を覚ます」とは書かないことになっている。
しかし、「覚ます」がおかしいと思わない人がいてもいいし、それにもそれなりの動機があるといえるだろう。
posted by ダイスケ at 03:23| Comment(0) | ことば | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年09月04日

月刊『言語』、休刊へ

月刊『言語』という雑誌がある。
全世界で1万ともいわれる各国・各民族の言語。その個別性と普遍性、構造、人間・社会との関わりなど、言語のあらゆる情報を提供する、世界で唯一の月刊誌。
という説明にもあるように、言語について幅広く扱っている。
出版社は大修館書店
本格的な専門書というよりは、言語に興味がある人に最近の研究を紹介するという感じで分野別の文献紹介が取り上げられることもある。

そんな良心的な雑誌である『言語』が、今年の12月号で休刊してしまうそうだ。
ひつじ書房
笠間書院

「裁判ことば」「手話」「方言」など、実にいろんなテーマが取り上げられるので、定期購読をする勇気はなかったし、そんなに頻繁に読んでいたわけではなかったが、
毎月どんな特集が組まれるかはチェックしてパラパラめくっていたし、メルマガ「げんごろう」も楽しみにしていたのに。
(リレー・エッセイ「私が言語学者になったワケ」では、その月に寄稿した人が登場して、言語学に興味をもった意外なきっかけを知ることができるのがおもしろかった)

とにかく残念だ。
研究社の『英語青年』という雑誌もweb版へ移行してしまったし(こちらは文学系の記事も多い。紙媒体の出版をやめたことを最近までしらなかった)、言語学は人気ないのだろうか。
けっこう大きい本屋に行っても言語学のコーナーはなかなかないし、言語学ってマイナーだなとは常日頃から思っていたけど。

クイズ番組で日本語の問題が取り上げられたり英語教育は熱気を帯びているのに、だから言語学!とはならないんだよなあ。

さびしい。。。
タグ:言語学
posted by ダイスケ at 05:34| Comment(0) | 日々の出来事 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする