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■大学芋はなんで「大学芋」という名前?「大学」+「芋」=「大学芋」と単純にはいえない。そう考えると、ことばには不思議がいっぱい。「大学芋」をきっかけにことばについて考えるブログです!
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2009年03月22日

無冠詞に無関心?

英語の冠詞は難しい。
aをつけるのか、theをつけるのか。
その一方で、冠詞をつけないという選択肢もある。

だが、イディオムの場合はそうした判断をする以前に「まぁ、そういうものだからそれで覚えておこう」と思うかもしれない。
たとえば、on footというとき、footはなぜ冠詞がないのか。
イディオムだから覚えればいいやと済ませるのは、なんだか気持ち悪い。

footは「足」という意味だが、on footというときのfootの意味の焦点は、
肉体の一部としての足というよりもむしろ足を使って行う行為、つまり歩くことにあるといえる。

肉体の一部としての足なら数えることもできるが、歩くことを数えるのは難しい。
どこからどこまでがひとつの「歩くこと」と数えられるのかという境界がないからだ。
そうするとtheを使って特定化する意識もはたらかない。
具体的な身体部位としての「足」と比べて、より抽象的な「歩くこと」に近い意味の使われ方では冠詞との相性が悪そうだ。

最近、on footのfootに似た使い方は、日本語の「足」にもあることに気づいた。
「彼は足が速い」というときの「足」だ。
このときの「足」は、体の一部としての足というより「走ること」を表している。
だからこそ「速い」ということばと結びついているのだろう。

日本語でも英語でも「足」→「足を使って行うこと」という原理がはたらいている(「歩く」と「走る」というちがいはある)。
英語ではそのちがいがことばに反映されるのに、日本語ではそのちがいを表現するする手段がない。
そういう形で冠詞に興味をもてば、ちょっとワクワクしませんか?
posted by ダイスケ at 02:58| Comment(4) | ことば | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年03月18日

書見台

買っちゃった、書見台!!

本の内容まとめたり、引用したりするときには本を開いた状態でパソコンに向かいたいわけだけど、それがなかなか難しい。
開いた状態でおとなしくしてくれるほど本は優しくない。
地味に集中力を削がれる。

そこで、先日東急ハンズに行ったときに見つけたのでさっそく購入。
書見台っていろんな種類のがあるんですね。
とりあえずあんまりお金もないので一番安いのを。
もしこれで至らないことがあれば、他のやつの購入も検討しよう。
さぁ、これで作業効率アップだ!

現在、徹夜でサークルの読書会のためのレジュメ作成中。
言語学ではとても有名な論文。
内容は簡単ではないけど、超おもしろい!
睡眠時間削っても全然惜しくない(笑)。
やりたかったことやれているなと実感する。
3杯目のコーヒーを飲みながらカタカタ文字を打ってます(^^)
書見台に論文のコピー(わかりづらい 笑)
タグ:日記
posted by ダイスケ at 06:31| Comment(0) | 日々の出来事 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年03月17日

The Day of the Jackal

"Your name. Clearly you do not want to give us your real name. So what shall we call you?"
The Englishman thought for a moment. "The Jackal," he said. (p. 7)


Forsyth, Frederick. 1999. The day of the jackal. Longman.
英語の勉強の一環として読んだ本。
小説を読むのもいいよと言われて、自分もなんか読んでみようかと思って。


舞台は1963年のフランス。

アルジェリア独立を認めたド・ゴール大統領とそれに反発する軍人のグループ。
ド・ゴール暗殺のため一人の外国人が雇われた。
ジャッカルと名乗るプロの殺し屋は着々と暗殺計画を進める。

その一方で、フランス政府もこの暗殺計画に気づく。
フランスで最も優秀な探偵クロード・レベルがジャッカルを捕まえるべく動き出す。

追うレベルと追われるジャッカル。
果たして、大統領暗殺は阻止されるのか?


そんな感じの内容。
歴史的には大統領暗殺は起こらなかったわけで、この話の結末はそういう意味ではわかってしまうのだけど、そんなことはまったく気にならずに楽しめる。
前半のジャッカルの行動の意味が後半でわかったりするのはなかなかスリリング。


英語の難しさはペンギンのレベル4なのだけど、4ってつまりどれぐらいなのだろう?
小難しい表現はあまり出てこなかったので、趣味で読むにはちょうどよかった。

登場人物や地名が多くて、固有名詞にはちょっと疲れた。
これ、なんだっけ?ってことがよくあった。
日本語でもそれはそうだろうけど。

ある人物なんて、登場したそのページのうちにジャッカルの犠牲者に。
It was the last thing he said. (p. 86)って、あっさりやられすぎでしょ(笑)。


そして、やはり英語の研究をしたいと望むなら英語に触れるのは大事だなと改めて思った(当たり前だけど)。
Just outside Pris, a plane was ready to fly Lebel and Caron to Gap. (p. 64)は、flyを他動詞として使って目的語に飛行機で運ばれる人間がきている。
他にも、... and orders were still coming through for robbing jewellers. (p. 20)では、oderはcome throughと使われている。
なるほどなあと英語の表現も参考になる。
ちなみに、後者はMetaphors We Live By 第2章で出てきた導管メタファーの一例だなとか気づくのも楽しい。


なかなか英語の本を1冊読みきることって少ないかもしれない。
100ページくらいで薄い本だけど、1冊ちゃんと読むとなかなか達成感はある。


映画化されていてDVDも見た。
映画にしては地味すぎるほど淡々と進んでいくのが、緊張感を高める感じでこれで飽きさせないのはすごいなあ。
ジャッカル役の俳優さんがとにかくかっこよかった。

DAY OF JACKAL          PLPR4 (Penguin Readers (Graded Readers)) [ペーパーバック] / Frederick Forsyth (著); Penguin (刊)
DAY OF JACKAL
Penguin Readers


ジャッカルの日 [DVD] / エドワード・フォックス, アラン・バデル, トニー・ブリトン, シリル・キューザック (出演); フレッド・ジンネマン (監督)
ジャッカルの日 [DVD]
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2009年03月14日

塾でバイトして1ヶ月

前にも書いたとおり、2月から塾のバイトを始めた。

バイト先に塾を選んだのは、お金を稼ぐにしても自分のやりたいことに少しでもつながっていることをしようと思ったからだ。

6月からは教育実習もするので、その前に塾でバイトするのはちょうどいいかと思った。


ただ、塾でバイトすること自体には少し慎重になっていた。
塾は2度目だが、1度目の塾があまり自分には合っていなかったため、どんな塾でもいいとは思わなかった。
今回は前回よりうまくできるかどうか、ちょっと不安だった。


今の塾にはじめて電話したとき、あぁ、ここならなんとかやっていけそうだと思った。
塾長さんが直接電話に出てくださったのだが、この人のもとでなら大丈夫だと思った。
直感でそう思った。不思議なことだけど確信していた。

塾の応募の電話としてはしつこいぐらい質問をしたと思うけれど(使うテキストや、急に普段担当していない生徒を担当することになったときの引継ぎなど)、丁寧に答えていただいた。

一度見に来てくださいといわれ、塾にうかがい直接話をする。
面接というよりは授業の進め方などを話して、よろしくお願いしますという感じだった。
採用テストもなかった(そういう方針なのかも)。
電話の時点でほぼ決まりだったようだ。


とても小さい塾で、生徒の数も少ない。講師の数も少ない。
温かみのあるところだ。
それは塾長さんの人柄によるところが大きいと思う。
(ただ、講師同士の交流は少ない気がする)


塾長さんにはなんだか話をしたくなるような何かがある。
授業が終わった後に、しばらく話をすることもときどきある。
ずいぶんと信頼していただいているようで恐縮だが、うれしいことだ。
塾長さんとはバイトをやめても交流はあるだろう。
ここでバイトできてよかったなと思う。
タグ:日記
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2009年03月13日

Metaphors We Live By 第6章

第6章、存在のメタファー。
これで本書で3種類に分けられるメタファーのすべてが出揃った。

これを読んでいかに人間が境界のないものに境界を与えているかがわかった。普段は山っていうものがあると思い込んでいるけれども、言われてみれば、どこからが山でどこからが谷かなどというのは自然に決まっているわけではなく、人間がそうだと決めているだけだ。

人間が確かだと思っているものも、全然確かなものなんかじゃないのかもしれない。

*****

6. Ontological Metaphors
Once we can identify our experiences as entities or substances, we can refer to them, categorize them group them, and quantify them―and, by this means reason about them.(p. 25)


空間の方向づけから得られる概念を理解するための基盤は豊かではあるが、限られてもいる。それに対して、物体(objects)や内容物(substances)の経験からは、さらなる基盤を得ることができる。私たちの経験を物体や内容物を通して理解することで、経験を抜き出し、それを個別の存在物(entities)やある一つの種類の内容物として扱うことができる。それらは、「存在のメタファー」(ontological metaphors)と呼ばれる。存在物や内容物と同一視してしまえば、それに言及したり、カテゴリーやグループに分けたり数量化したりでき、そして、そうすることでそれらを推論することができる。

山のように境界がはっきりしていないものでも、私たちは境界のあるものとしてカテゴリー化している。それは、山の位置を突き止めるなどの目的を満足させるためである。同様に、存在のメタファーもさまざまな目的にかなっている。私たちの使う存在のメタファーの範囲はきわめて広い。そうした目的の種類と代表例をみてみよう。

Referring
My fear of insects is driving my wife crazy.
We are working toward peace.

Quantifying
It will take a lot of practice to finish this book.
You’ve got to much hostility in you.

Identifying Aspects
The ugly side of his personality comes out under pressure.
I can’t keep up with the peace of modern life.

Identifying Causes
The pressure of his responsibilities caused his breakdown.
He did it out of anger.

Setting Goals and Motivating Actions
He went to New York to seek fame and fortune.
She saw getting married as the solution to her problems.

方向のメタファーがそうだったように、これらの表現の大部分がメタファーだとはわからない。その理由のひとつは、目的が言及や数量化などに限定されているからだ。存在のメタファーは単に存在物や内容物とみなすだけではなく、手の込んだものでもある。次に示す例はTHE MIND IS AN ENTITYがいかに手の込んだものかを示すものである。

THE MIND IS A MACHINE
My mind just isn’t operating today.
Boy, the wheels are turning now!
I’m a little rusty today.

THE MIND IS A BRITTLE OBJECT
Her ego is very fragile.
She is easily crushed.
The experience shattered him.

こうしたメタファーによって、mindがどんなものであるのかについてさまざまなモデルが得られ、心理的な経験の持つさまざまな側面に焦点を当てることができる。機械のメタファーから、mindには入―切の状態、効率の水準、作動状態などがあることがわかる。心理的な経験の中にはこれらのメタファーを介さないと思い及ばない領域もある。

He broke down. (THE MIND IS A MACHINE)
He cracked up. (THE MIND IS A BRITTLE OBJECT)

機械が故障したら(break down)、その働きが停止するだけだが、もろい物体が砕けたら(crack up)、その破片が飛散する。したがって、だれかが気が狂って暴れたらHe cracked up.と言うのが適切だし、無気力で働けなくなったらHe broke down.と言うだろう。

存在のメタファーはとても自然で私たちの思考に浸透しているので、普通は心理的な現象を直接記述したものだと受け取られる。私たちはメタファーによって得られるモデルによって思考し、活動しているのだ。

存在のメタファーのうちのひとつに、「容器のメタファー」(container metaphors)というのがある。 私たちは外界と境界を接する表面(皮膚)と内外(肉体の内と外)という方向性をもつひとつの容器なのである。これを他の物体にも投影し、容器とみなすことができる。土地の領域についていえば、森の中(in)や外に(out of)いるという表現ができる。壁であれ、生垣であれ、抽象的な線や面であれ、内側と境界面をもつような領域を区分けする。そうすると、There’s a lot of land in Kansas.のように内側に内包する内容物は数量化される。

また、視界もひとつの容器として概念化される。VISUAL FIELDS ARE CONTAINERというメタファーは、ある領域を見たとき、視力の及ぶ範囲がその領域を限定するという事実から発生する。たとえば、The ship is coming into view.やHe’s out of sight now.となる。

出来事(events)、行為(actions)、活動(activities)、状態(states)にも存在のメタファーが利用される。

Are you going to the race?
There was a lot of good running in the race.
How did Jerry get out of washing the windows?
He’s in love.
We’re out of trouble now.

関連記事:
Metaphors We Live By 第1章
Metaphors We Live By 第2章
Metaphors We Live By 第3章
Metaphors We Live By 第4章
Metaphors We Live By 第8章
Metaphors We Live By 第9章
Metaphors We Live By 第11章
認知言語学キーワード紹介(3):メタファーと経験基盤主義
posted by ダイスケ at 03:01| Comment(0) | 言語学の紹介 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

Metaphors We Live By 第4章

第4章、方向づけのメタファー。
メタファーについて勉強するようになってから、日本語の中のメタファーにも気づくようになった。この読書会をやっているときに、たまたま飲んでいたほうじ茶のペットボトルに「上質な香り」と書いてあって(うろ覚え、たしかそんな感じ)、これは「良いことは上」のメタファーだなと。いかにメタファーが日常的な表現に浸透しているかがわかる。

ただ、難しいのはこうしたメタファーがあることがわかっても、実際に使われる語彙のすべてがわかるわけではないことだ。たとえば、英語と同様、日本語にも「嬉しいことは上、悲しいことは下」というメタファーがある。たとえば、「気分は上々」という表現。しかし、「気分は下々」とは言わない。「彼は落ち込んでいる」と「彼は落ち着いている」は同じ「落ちる」ということばを使いつつも、その意味するところはだいぶちがう。

どんなことばが使われ、どんなことばが使われないか。
なぜある表現は慣用的で、ある表現は慣用的でないか。
不思議だけど、おもしろい。

*****

4. Orientational Metaphors
We will call these orientational metaphors, since most of them have to do with spatial orientation.(p. 14)
They have a basis in our physical and cultural experience. (p. 14)


これまで扱ってきたのは、「構造のメタファー」(structural metaphors)、つまりある概念が他の概念が他の概念を通すことで、メタファーによって構造を与えられる場合である。しかし、メタファーには別の種類のものがある。ある概念の全体系を他の概念との関係によって構成するものである。それは「方向づけのメタファー」(orientational metaphors)とよばれる。というのは、こうしたメタファーの多くは、上―下、内―外、前―後、着―離、深―浅、中心―周辺といった空間の方向性に関係があるからだ。方向付けのメタファーは、ある概念に空間的方向性を与える。

メタファーに使われる方向性は恣意的なものではない。肉体的経験と文化的経験に基づいている。上―下、内―外は物理的性質のものだが、それらに基づく方向のメタファーは文化によって異なりうる。

実際に上―下のメタファーを見てみよう。そのメタファーが生まれる基盤についても言及してみる(あくまで示唆するにとどまるもので、決定的な説明だとは考えていない)。

HAPPY IS UP; SAD IS DOWN
I’m feeling up. My sprit rose. That boosted my spirits. I’m feeling down. I’m depressed. My spirit sank.
肉体的基盤:悲しいときはうなだれた姿勢であり、元気なときはまっすぐした姿勢である。

HEALTH AND LIFE ARE UP; SICKNESS AND DEATH ARE DOWN
He’s peak of health. He’s in top shape. He fell ill. He came down with the flu.
肉体的基盤:重い病気であれば人は横たわり、死ねば倒れた状態になる。

HAVING CONTROL OR FORCE IS UP; BEING SUBJECT TO CONTROL OR FORCE IS DOWN
I have control over her. His power rose. He is under my control. His power is on the decline.
肉体的基盤:体が大きいと体力もある。戦いの勝者は上に立つ。

MORE IS UP; LESS IS DOWN
The number of books printed each year keeps going up. My income rose last year. The number of errors he made is incredibly low. His income fell last year.
肉体的基盤:容器の中や山積みのものに、物質や物体を加えると高さが上がる。

RATIONAL IS UP; EMOTIONAL IS DOWN
The discussion fell to the emotional level, but I raised it back up to the rational plane. We put our feelings aside and had a high-level intellectual discussion of the matter.
物理的文化的基盤:人間は他の動植物を支配している。人間がすぐれているからであり、理性的にものを考えることができるからだ。そこで、CONTROL IS UPがMAN IS UPの基盤になり、さらにそれがRATIONAL IS UPの基盤となっている。

以上のことから、次のことを結論として提案したい。

・私たちの基本概念は、一つあるいはそれ以上の空間関係づけのメタファー(spatialization metaphor)によって構成されている。

・空間関係づけメタファーには内的な体系性がある。HAPPY IS UPは孤立した無関係の例集まりではなく一貫した体系を示している。

・空間関係づけメタファーには、メタファー間の外的な体系性もあり、それがメタファー間に一貫性(coherence)を与えている。GOOD IS UP、HAPPY IS UP、HEALTH IS UPとALIVE IS UPの関係、STATUS IS UPとCONTROL IS UPの関係は一貫している。

・メタファーの肉体的・社会的基盤となりうるものは多くある。なぜあるものが選ばれ、他のものが選ばれないか、その理由の一部は全体の体系の一貫性にようようだ。たとえば、happy is wide(例としてI am feeling expansive.〈大らかな気持ち〉がある)よりもhappy is upが主要なメタファーであるのは、good is upやhealthy is upとの一貫性によるのだろう。

・肉体的・文化的な経験は空間関係づけのメタファーの基盤となるが、どの基盤が選ばれ、主要なものとなるかは、文化によって異なる。

メタファーの基盤となる経験については、まだよくわかっていない。ただ、どんなメタファーも、その経験上の基盤から切り離せば、理解できず十分に表現されることはない。異なった経験に基づいているため、一致しないメタファーもある。UNKNOWN IS UP(例はThat’s up in the air.〈未決定〉やThe matter is settled.〈落着〉)はUNDERSTANDING IS GRASPINGと経験の基盤は似ている。しかし、GOOD IS UPやFINISHED IS UPとは一貫していない。それは経験の基盤が異なるからである。

関連記事:
Metaphors We Live By 第1章
Metaphors We Live By 第2章
Metaphors We Live By 第3章
Metaphors We Live By 第6
Metaphors We Live By 第8章
Metaphors We Live By 第9章
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認知言語学キーワード紹介(3):メタファーと経験基盤主義
posted by ダイスケ at 02:37| Comment(0) | 言語学の紹介 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年03月09日

This is a pen.

This is a pen.といえば、だれもが一度は聞いたことがある日本人っぽい英語(?)である。
これは英語教科書に登場した文ではなく、ドリフのギャグらしい。


一見あまりに単純すぎるこの英文も、ことばのことを考えるにはよいきっかけになる。

この英文はうまく日本語に訳すことはできない。
もちろん、「これはペンです」と訳してまちがいではない。
だが、同時に「これはペンだ」や「こちらはペンでございます」
と訳してもかまわないはずである。

つまり、だれがだれに対して発言するのかというのを
考慮しなければ適切な訳を与えることができない。

英語のThis is a pen.のように、だれに対しても中立的(だと思われる)表現は、日本語にはないだろう。


このことを考えると、英語に敬語はあるのか?という疑問にも二通りの答え方ができる。

丁寧な表現の仕方がある、という意味では英語にも敬語がある。
相手に何か依頼するとき、Will you 〜 ?とWould you 〜 ?では、後者のほうが丁寧だと学校で習う。

しかし、文法のシステムとして敬語がある、という意味では英語には敬語があるとはいえないだろう。
英語では、This is a pen.はこれ以上丁寧に(あるいはぶっきらぼうに)言うことはできないからだ。
日本語は理論上、あらゆることを丁寧に表現できる。


日本語は、そういう点では人間関係に敏感な言語っていうことになるんだろうか。


ちなみに、これは国文科設置の日本語文法という授業のときに先生が雑談として話した内容を少し膨らませたものです。
posted by ダイスケ at 17:37| Comment(0) | ことば | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年03月07日

Metaphors We Live By 第3章

第3章は、メタファーを用いた理解では焦点が当たるところと隠れてしまうところがあると述べられている。
認知言語学の入門書で多少メタファーについては知っていたつもりだったけど、本によってはあんまりこの点はちゃんと紹介されていなかった気がする。
やっぱり原書にあたる必要はありますね。

*****

3. Metaphorical Systematicity: Highlighting and Hiding
The very systematicity that allows us to comprehend one aspect of a concept in terms of another will necessarily hide other aspects of the concept.(p. 10)


メタファーの体系性によって、私たちはある概念の一側面を他のものを通して理解することが可能になるが、これは必然的にその概念の他の側面を隠すことにもなる。メタファーから成る概念により概念のある側面には焦点が当たるが、メタファーとは一致しない他の側面には焦点が当たらなくなってしまう。たとえば、議論のもつ戦闘的側面にとらわれると、議論の協調的側面はしばしば見落とされてしまう。

さらにとらえにくい例は、「導管メタファー」(conduit metaphor)において見られる。それは言語についての私たちの言い回しに関するメタファーであり、次のような複合的なメタファーによって構造化されている。

IDEA (or MEANING) ARE OBJECTS.〈考え(あるいは意味)は物である〉
LINGUISTIC EXPRESSIONS ARE CONTAINERS.〈言語表現は容器である〉
COMMUNICATION IS SENDING.〈コミュニケーションは送ることである〉

話し手は考え(物)をことば(容器)につめてそれを(導管を通して)聞き手に送る。聞き手は考え(物)をことば(容器)から取り出す。いくつか実例をみてみよう。

The CONDUIT Metaphor
It is hard to get that idea across to him.〈通じさせる=わからせる〉
I gave you that idea.〈あげる=教える〉
Your reasons came through to us.〈伝わる=腑に落ちる〉
It’s difficult to put my idea into words.〈ことばの中に入れる=ことばにあらわす〉
The sentence is without meaning.〈意味がない〉
The idea is buried in terribly dense paragraph.〈文章の中に埋もれる〉

これらの例から、メタファーによって何が隠されているのか気づくのは難しい。そもそもメタファーがあると気づくことすら難しい。それだけ言語について言及する表現が慣習化しているのだ。しかし、導管メタファーが含意するものをみれば、コミュニケーションのプロセスのいくつかの側面が隠されていることがわかる。

まず、導管メタファーのLINGUISTIC EXPRESSIONS ARE CONTAINERSという側面は、語や文が文脈や話し手とはとは無関係に意味をもっていることを含意し、MEANINGS ARE OBJECTSという側面 は、意味そのものも人や文脈とは無関係に存在していることを含意する。

しかし、文脈が問題となる場合も多くある。次の文は実際の会話の中で記録された有名な例である。

Please sit in the apple-juice seat.

文脈を抜きにすると、この文はまったく意味をなさない。しかし、この文が発話された文脈のなかでは完全な意味をもっている。朝食時に四つの席があり、そのうち三つにオレンジ・ジュース、一つにアップル・ジュースが置いてあった。apple-juice seatが何を意味しているかは明らかであった。

We need new alternative sources of energy.という文は、石油会社の社長が言うのと環境保護団体の会長が言うのとでは、意味するところはまったくちがう。文に意味があるのか、あるならどんな意味があるのかを決めるのに文脈が必要とされる場合には、導管メタファーは当てはまらないのである。

これまでみた例から、メタファーから成り立つ概念は、コミュニケーション、議論、時間について部分的な理解しか与えないことがわかる。そのため、これらの概念の他の側面を隠してしまう。メタファーが与える構造が関わるのは部分的であり、全体ではないのだ。たとえば、時間は実際にはお金とはちがう。時間を使う(spend your time)ことはできても、それを取り返すことはできない(can’t get your time back)のだ。

メタファーから成り立つ概念は文字通りの意味を超えていわゆる比喩的な、詩的な思考やことばにまで拡張されうる。 概念がメタファーによって構造化されるというのは、概念は部分的にメタファーによって構造を与えられるということであり、またある面には拡張できるが他の面にはできないということを表す。

*****

言語を研究する人にとっては、朝食時の何気ない会話からも考えのきっかけが生まれるってことを実感する。
でも、それは普段から言語のことを考えていた結果だろう。
最初からアンテナを張っていないと、いくらそうした表現に出会ってもキャッチできないだろうから。


関連記事:
Metaphors We Live By 第1章
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認知言語学キーワード紹介(3):メタファーと経験基盤主義
posted by ダイスケ at 11:22| Comment(0) | 言語学の紹介 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

Metaphors We Live By 第2章

Metaphors We Live Byの第2章。
前回も書いたようにサークルの読書会として本書を扱っている。他のメンバーにも好評のようでよかったよかった。

*****

2. The Systematicity of Metaphorical Concepts
Because the metaphorical concept is systematic,
the language we use to talk about that aspect of the concept is systematic.(p. 7)


メタファーから成り立っている概念には体系があるからこそ、その概念のメタファーによって表されている側面について言及する言語も体系だっているのである。たとえば、ARGUMENT IS WAR〈議論とは戦争である〉というメタファーでは、戦争の語彙がその戦闘的側面に語る際に体系的に使われる。これは、戦闘という概念のネットワークの一部が、議論という概念の一部を特徴づけ、言語がそれにならうからである。そのため、メタファーによる言語表現をみることで、メタファーに基づく概念の本質、そしてメタファーに基づく私たちの活動の本質を理解することができる。今度はTIME IS MONEYの例をみてみよう。

TIME IS MONEY〈時間は金である〉
You’re wasting my time.〈浪費する〉
This gadget will save you hours.〈節約する〉
I don’t have time to give you.〈持つ、あげる〉
How do you spend your time these days?〈費やす〉
That flat tire cost me an hour.〈かかる〉
You don’t use your time profitably.〈有益に使う〉
I lost a lot of time when I got sick.〈失う〉

時間は貴重な品物であり、限りある資源であり、お金である。電話の通話単位、時間給、ホテルの宿泊料金、ローンの利子などがそうだ。これらは近代の産業社会にはじめてあらわれたものであり、あらゆる文化にみられるわけではない。時間が貴重な品物であり、限りある資源であり、お金であるかのように行動している事実に対応して、時間をそのようなものだと考えているのだ。

TIME IS MONEY、TIME IS A LIMITED RESOURCE〈時間は限りある資源である〉、TIME IS A VALUABLE COMMODITY〈時間は貴重な品物である〉はすべてメタファーによって成り立つ概念である。これらは下位範疇にわかれる一つの体系をなしている。こうした下位範疇の関係が、メタファーの間の含意関係の特徴なのである。TIME IS MONEYは、そうした体系全体の特徴を説明するもっともはっきりした例である。メタファー間の含意関係はメタファー的概念の一貫した体系を示し、さらにそうした概念に対応するメタファー的表現の一貫した体系が示すのである。

*****

翻訳のリンクも。

レトリックと人生 [単行本] / ジョージ・レイコフ, マーク・ジョンソン, 渡部 昇一, 楠瀬 淳三, 下谷 和幸 (著); 大修館書店 (刊)
レトリックと人生 [単行本]
ジョージ・レイコフ, マーク・ジョンソン
渡部 昇一他訳
大修館書店


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