【ブログ紹介】
■大学芋はなんで「大学芋」という名前?「大学」+「芋」=「大学芋」と単純にはいえない。そう考えると、ことばには不思議がいっぱい。「大学芋」をきっかけにことばについて考えるブログです!
■はじめての方はこちらへ

2009年02月25日

過去形の-edからオノマトペ

今月から塾のバイトを始めた。中学生と高校生に英語を教えている。

塾のバイトをやるのは2度目で、1度目はもうだいぶ前になるが、そのときはあまり余裕がなかったのだと思う。自分のことで精一杯という感じで。

それに比べると、今は教えること自体を(「教える」なんていうのもおこがましいが)楽しめている気がする。そう、楽しいのだ。

生徒の姿は自分の過去の勉強を振り返る機会になる。中学高校のときに自分が疑問に思ったことを思い返したり、ときには当時気がつかなかった新しい発見がある。

現在の学習指導要領(英語)通りだと、中学1年の最後に(つまり今ごろ)動詞の過去形を習う。

規則動詞の過去形。-edの発音は3通りあると教えられる。以下は、中学1年生用の文法のテキストから(中1に対して容赦のない説明だなあ…)。

(1)[t]以外の無声音[k,p,f,s,tʃ,ʃ]のあと → [t](helpedなど)
(2)[d]以外の有声音のあと → [d](playedなど)
(3)[t],[d]のあと → [id](wantedなど)

有声音は、声帯(のど)の振動を伴って発する音、無声音は、声帯の振動を伴わないで発する音、[tʃ]はchの音で、[ʃ]はshの音だと大雑把に思ってください。
このへんは音声学の知識。

さて、実際に中1に教える際に、「有声音が…」などといってもしょうがないので、どうやって教えようかと思っていた。

k,p,f,s…などと発音していると、「クスクス」、「プププ」、「フフフ」という笑い声を表す擬音語(オノマトペ)を思いついた。

このときはじめて日本語の笑い声の擬音語は無声音を使うようだと気づいた。笑うときの息が出る感じが、無声音っぽいのかもしれない。

ただ、英語の笑い声は事情がちがうようだ。giggle, titter, chukle, snicker, sniggerなど、[ɡ]のように有声音が入っているものもある。日英で音の捉え方がちがうことを反映しているのか?

過去形のedを考えていたのに、いつの間にかオノマトペの日英対照ができたらおもしろいなんて思ってしまった。音声学はいい加減にしか覚えてないし、オノマトペの論文も読んだことないので、いつかちゃんと勉強してみたい。今回だいぶあやふやな知識で書いているので、用語の使い方が正しいか自信ない。一応音声学の教科書見たけど…。

でも、こうやって、ことばについて考えをめぐらせるだけで楽しい(笑)。

あ、ちなみに、-edの発音の教え方は
a. 基本的には[d]、
b. [t][d]のときは[id]、
c. 〈笑い声(クスクス、プププ、フフフ)〉[k,s,p,f]に〈集中シューチュー〉[ʃ,tʃ]するときは[t]

というように考えてみたのですが、どうでしょうか?
posted by ダイスケ at 04:50| Comment(0) | ことば | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年02月21日

ドイツ語のしくみ

Mein Deutsch ist gut!
外国語の勉強はなんといっても心意気が大切ですからね。(p.17)



3年生になり第2外国語の授業が必修でなくなってから、
ほとんどドイツ語の勉強をしていなかった。

リハビリの意味をこめ、ドイツ語をやり直そうと思って手に取ったのがこの本。
清野智明. 2005.『ドイツ語のしくみ』白水社.

白水社の「言葉のしくみ」シリーズのドイツ語版。
この「言葉のしくみ」シリーズ、ドイツ語以外は見てないが、
とても好感がもてそうだ。
「楽しみながら“通読”できる、画期的な語学入門書シリーズの誕生。挫折なんかさせません!」
という宣伝文句は、少なくともドイツ語版はその通りだと思った。

とにかく細かい規則を覚えなきゃという姿勢ではなく、
おおざっぱにこういう特徴があるよと語っていく感じで、重々しくない。
ドイツ語にお決まりの格変化の表も出てこない。
覚えないと次のページに進めないということがまったくない。
かといって説明がいい加減ということはなく、大事な部分は押さえられている。

もちろん着実に語学力をつけるには、いちいち格変化などを覚えなければならないにしても、
そのために先に進めなくなってしまうのはもったいない。
一通りの特徴を見渡すことができる本はないかなと思っていたところだったので、
この本はまさにちょうどいいと思った。
文法項目の網羅性や一覧性は他の本に任せましょう。

中身は2ページで1項目という構成になっており、とても見やすい。
こういうページの区切りと内容の区切りが同じになっていると、
「ここまでやった!」と気持ちがすっきりして記憶の定着にもいいと思うのだけど、
みなさんはどうでしょうか?
こういうのってやる気に意外なほど影響を与える気がする。

CDの構成もいい。
1トラックに例文ひとつ(ある意味贅沢?そのため18分の内容で99トラックもある)。
その1文に対して自然なスピードと、1語ずつ間をおいて発音するのの2回分の音読がある。
聞きやすく、発音の練習をするにもよいと思う。
CDに入っている例文はやみくもに選ばれたのではなく、
これを見れば本書でどんなことをやったか思い返せるようになっていると感じた。
まずこの例文を覚えるだけでもだいぶ効果があるだろう。
CDのサイズが8cmなのが残念。

はじめてドイツ語をやる人にも、もう一度やり直す人にもおすすめできる。
他の外国語をやるときにも、このシリーズから始めてみたい。

ドイツ語のしくみ [単行本] / 清野 智昭 (著); 白水社 (刊)
ドイツ語のしくみ
清野 智昭 (著)
白水社 (刊)
タグ:ドイツ語
posted by ダイスケ at 22:03| Comment(4) | 本の紹介 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

Metaphors We Live By 第1章

ちょっと難しめの本をみんなで読む、つまり読書会をするようなサークルは今は少ないと思う(昔はあったのかもしれないけど)。うちの大学にもそうしたサークルは少なく、自分はその珍しいサークルに所属している。

今回自分が読書会の担当者で本の要約をしたので、せっかくなのでここに載せておくことにした。扱うテキストはこれ。
Lakoff, G. and Johnson, M. 2003. Metaphors We Live By: With A New Afterward. The University of Chicago Press.

今回は第1章のみ。
認知言語学の基本文献なので、それに興味がある人の参考になれば幸いです。
日本語にするにあたって、翻訳も参照しています。

*****

1. Concepts We Live By

The essence of metaphor is understanding and experiencing one kind of thing in terms of another.


多くの人々にとってメタファーとは詩的創作と美辞麗句の装置であって、普通のことばというよりは特別なことばづかいである。また、それは言語だけに関わる特徴であり、思考や行動というよりはことばの問題だとされている。しかし、メタファーは日常生活に広くゆきわたっており、それは単に言語だけでなく私たちの思考や活動にまで浸透しているのである。私たちのいつも用いる概念体系は、思考の点からみても行動の点からみても根本的にメタファー的性質を備えている。そして、概念が日常的な活動によって構造化されているならば、考え方や経験、日々の営みはメタファーの問題ということになる。普段意識されることがなく実体がつかみにくい概念体系を把握する重要な手段は、言語を観察することである。

概念がメタファー的であり、そうした概念が日常の活動に構造を与えていることを理解するために、まずARGUMENT〈議論〉という概念とその概念のメタファーであるARGUMENT IS WAR〈議論とは戦争である〉を取り上げよう。

ARGUMENT IS WAR〈議論とは戦争である〉
Your claims are indefensible.〈守りようがない=弁護の余地がない〉
He attacked every weak point in my argumentation.〈弱点を攻撃する〉
His criticisms were right on target.〈正しく的を射る〉
I demolished his argument.〈議論を粉砕する〉
I've never won an argument with him.〈議論に勝つ〉
You disagree? Okay, shoot!〈撃ってみろ=言ってみろ〉
If you use that strategy, he'll wipe you out.〈戦略、やられる〉
He shot down all of my arguments.〈撃破=論破〉

重要なことは、単に戦争用語を用いて議論のことを語っているのではないということである。議論には現実的に勝ち負けがあり、相手は敵と見なされる。相手の立脚点(陣地)を攻撃し、自分のそれを守る。議論の中で行うことの多くは、部分的ではあるが戦争という概念によって構造を与えられているのである。

メタファーの本質とは、ある事柄を別の事柄を通して理解し、経験することである。議論は戦争という観点によって理解され、行われ、言及される。つまり、概念はメタファーによって構造化され、行動もメタファーによって構造化され、したがって、言語もメタファーによって構造化されるのである。

さらにいえば、これが議論をし、議論について語る日常的なやり方ということだ。それは詩的な、思いつきの、修辞的なことばではない。文字通りのことばである。戦争用語で議論を語るというのは、議論をそのように理解しているからである。

メタファーというのは、ただ単に言語の、つまりことばづかいの問題ではない。それどころか、人間の思考過程は大部分メタファーによって成り立っているのである。人間の概念体系の中にメタファーが存在しているからこそ、言語表現としてのメタファーが可能なのである。

Metaphors We Live by [ペーパーバック] / George Lakoff (著); Univ of Chicago Pr (T) (刊)
Metaphors We Live by [ペーパーバック]
George Lakoff and Mark Johnson
University of Chicago Press


関連記事:
Metaphors We Live By 第2章
Metaphors We Live By 第3章
Metaphors We Live By 第4章
Metaphors We Live By 第6
Metaphors We Live By 第8章
Metaphors We Live By 第9章
Metaphors We Live By 第11章
認知言語学キーワード紹介(3):メタファーと経験基盤主義
posted by ダイスケ at 03:04| Comment(2) | 言語学の紹介 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年02月17日

春めいてきた

関東では今月の13日に春一番が吹いた。
まだ夜は冷えるけれど、ちょっとずつ春めいてきたのかな。

それにしても、「春めく」っておもしろい表現だな思う。
「春」が動詞になるなんて。

英語でいえば、Spring has come.のように名詞を中心とした表現になるが、「春めいてきた」のような「生成」や「推移」の感覚はでてこないだろう。

このことは、2004年の「NHK日本語なるほど塾」という番組のテキストに加賀野井秀一さんが書かれていた。
当時は言語学のことはよくわかっていなかったけど(今もそんなにわかってないけど)、こういうことが勉強できたらおもしろいだろうなと思ったのはよく覚えている
(その後、加賀野井秀一さんの本は『日本語の復権』『日本語は進化する』を読んだ)。

そして現に今そういうことが勉強できる環境にいる(基本的に扱う対象は英語)。
それは本当にうれしいことだと思う。

さて、「春めく」とは言うけど、他の季節も「〜めく」と言えるのだろうか?
結論からいえばイエス。
手持ちの電子辞書に入っている『デジタル大辞泉』という辞書には「夏めく」「秋めく」も載っている。
でも、目にしたことはない(『明鏡国語辞典』には載ってなかった)。
春は特別ということか。
季節特有のことばをさがすのもおもしろいかもしれない。

さて、季節の中では「冬めく」だけはない。
でも試しにGoogleで検索してみたら(ある語がどのくらいの頻度でつかわれるか、ちょっと調べるためにもGoogleは便利。活用などをしっかり調べることはできないが)、「春めく」より「冬めく」のほうがヒット件数が多い。
おかしいなと思っていると、一青窈の歌に「冬めく」というのがあるらしい。
どんな歌か聴いてみたくなった。

参考文献
加賀野井秀一. 2004.『日本語“超”進化論』(NHK日本語なるほど塾)日本放送出版会.
posted by ダイスケ at 04:55| Comment(0) | ことば | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする